サウンド環境再刷新

hp-a8

Fostex HP-A8は個人的にかなり思い入れの強い製品だ。大学に入学したての頃、貯金の総力を結集して下位製品のHP-A3とSennheiser HD650を購入した事が僕のオーディオ道の始まりだった。その折、最上位機種のHP-A8も目に止まったが、定価10万円もするUSB-DACなど買える訳もなく、それ以降、上昇志向を持ちつつもHP-A3とHD650の組み合わせに一応は満足していた。

数年後、前回の記事にもあるようにゲームとの兼ね合いを図ってSound Blaster X7を購入してサウンド環境の刷新を行った。これ自体は間違いではなかったと今でも思っているが、僕の純粋なオーディオ道への執着は最終的にゲームに関わる機能を諦めさせる所まで肥大化していた。結局、あれもこれもと多機能を欲しがるよりも同じコストで1つの機能を充足させた方が、より満足度の高い結果になるという事を悟ったのである。僕にとってはそれが音楽再生だった。

もっとも、最大の要因は高嶺の花だったHP-A8が今やほぼ半額の約6万円で売られているという所にあった。オーディオにまったく関心のない人達からすれば十分に狂気じみているように見えるかもしれないが、さらなる高みを目指すオーディオマニア達がより上位の製品に移行しているおかげで(あるいは当初の値段が元々ぼったくり気味である事も関係して)古い製品はどんどん値段が下落していくのだ。

長い間、現状の環境で自分を納得させようとしていたが、今やあの時に目に止まった高嶺の花が手の届く距離まで降りてきている。この事実は僕の購買意欲を強力に後押しした。もはやマイク入力だの、ミックス出力などは瑣末な問題になっていた。

そして今、憧れのHP-A8が手元にある。HD650との組み合わせで発揮されるその力強く豊穣なサウンドは、僕のこれまでのサウンド環境を完全否定し得るほどの危険な力を持っていた。これでさえもまだオーディオ道の初歩に過ぎないというのだから恐ろしい。

美音を追求しすぎると音楽そのものへの敬意を失ってしまうと解っていても、それをやめる事ができない。どれだけ大層な理屈をこねていても所詮は札束の厚みが全てで、能動性が関係する部分はほとんどない。客観性にも乏しく、オカルトじみた言説が横行している。なかなかに業が深い趣味である。