増田でキャラクターを探す

小説を書いていると卑しい悪人を描く事に苦労する。単に醜悪なだけではなく布に汚れが浸透していくような嫌らしさを上手く表現したいのだが、なにぶんそこまで俗悪な発想を持ったおぼえがない。

そんな時はよく「はてな匿名ダイアリー」や「発言小町」を読む。前者は匿名のブログサービスで後者は相談サービスだ。これらのサイトは昔から絶妙にさもしい内容の投稿が寄せられる事でよく知られている。

それも決してありきたりな水準ではなく、いかにも現実味を感じる嫌らしさがそこにある。相手を貶めてでも体裁を保とうとする卑しさが思わず読者を必死にさせてしまう。コメント欄はいつも大盛り上がりだ。おそらくこの手の投稿はほぼ全てが創作で、話作りの上手い人が腕試しで書いているのだろう。

最近見つけた中で特に感心したエントリはこれだ。ところどころに表れる敵意とその正当化の過程がいかにも技巧に長けた陰湿さを湛えていてすこぶる不快な気持ちにさせられた。率直に言ってすごい。

このパパさん入園式も確か一人で来てたので変わってるなーと思っていた。

まず冒頭部分で語り手が少数派を見つけ出す観察眼に優れた人物という事が示されている。この時点ではまだ本性は露見していない。ところが次の一文で、いきなりアクセルをレッドゾーンまで踏み込むように敵意がうなりを上げはじめる。

順番が回ってきたパパさんが開口一番「半年前に妻とは死別した」と涙目で告白。

いやいや重い重い重い。家庭の事情なんて皆色々あるんだしこの場で言うこと??

離婚したと思われるの嫌だったとか?自意識過剰でしょ…

ここのセンテンスはかなり印象的だ。二行目で「パパさん」の告白を「重い」と酷薄に切り捨て、その態度を「この場で言うことか」と雰囲気を盾に正当化している。さらに続けて発言の意図を一方的に推定し、それをもとに「自意識過剰だ」との悪評までをも下す。

表面上は相手を敬称で呼ぶなどして体裁を保っていながらも、これらの一連の言動から底知れぬ敵意が語り手に浸漬している様子が伝わってくる。なぜか「パパさん」はろくに話した事もない語り手にここまで徹底して痛罵されているのだ。

しかもその後ヘラヘラ笑顔で会話に入ってくんの。なんか怖い。

この部分では自身の評価が正当なものと読者に認識させるために「パパさん」の挙動を批判すると同時に、あえて「なんか怖い」と心境を表明して自身を被害者の立場に置いている。これは排除に一見正当な理由を与えうる高度なテクニックである。

「色々教えてください」って言われても男親とは仲良くなんてできないし

今後保護者会のイベントなんかもある中で、良いパパアピールはしなくて良いから

保護者の集まりには正直出てきてほしくないなぁ

とあの場にいた他のママさんも思っていたんじゃないかなぁ

後半のセンテンスでようやく「男親とは仲良くできない」とあからさまに本音を漏らしてしまう。この内容から語り手が最初から「男親」そのものに偏見を持っていた事が明らかとなる。どんな鈍い読者もここで語り手の差別意識に気づく。おそらくはそれも作者の筋書き通りなのだろう。

最後に「保護者の集まりには出てほしくない」と明確に排外の意思を表しつつも「他のママさんもそう思っている」とあたかも自身の意見が全体の総意であったかのように結論づけている。この無自覚な傲慢さはぜひとも卑しい悪人に備えさせたい特徴だ。

個人的に、よく練られた俗悪さとは悪意や言動よりもそれを正当化する心境や様子の方にフォーカスを当てる事ではないかと思う。今日もまた良いインスピレーションを得られた。