やすりで窓を拭くな

芸術家と呼ばれている人たちの逸脱は大目に見られやすい。違法薬物の助けを借りて作曲を試みる音楽家は決して珍しくなく、過去には軍隊を扇動して革命を起こそうとする作家もいた。法的な免責までもは得られないが、少なくとも世論や雰囲気の中においてならそれを勝ち得ていると言える。

これは逸脱そのものが彼らの芸術性に寄与しているとの認識によるものだ。ゆえに彼らの犯罪行為や奇特な言動が必ずしも名声を汚すとは限らず、むしろ精神の昇華に繋がりうると考える向きから賛意を寄せられる事さえもある。

事実、まったく話を聞いてもらえず嘲笑されながら自害する最期を晒しても、なお「金閣寺」の気迫や繊細さは微塵も色褪せなかった。表現や芸術は本人の思想や精神から出力されるものだけれども、それ自体への評価は独立しているのだ。… 続きを読む

涙は流れないし警官もいない

ここ数日「小説家になろう」や「カクヨム」でランキング順にWeb小説を読んでいる。物書きの端くれとしてこの手のジャンルに思うところはもちろんたくさんあるが、結構な数が書籍化されているのも事実だ。学べるところもあるかもしれない。

ランキングのリストを眺めていくと非常に似通った設定の作品が多い事に気づく。いわゆる異世界ファンタジーだ。おおむね時代背景は中世からルネサンス時代で、ドラゴンクエストやその他のファンタジーRPGに類似した世界観を有している。

このベースに現実世界から転生する主人公や、ビデオゲーム的なギミック、ロールプレイングの強制…などの味付けと、何人もの可愛い女の子やどんな敵でも軽々と倒せる技能といったトッピングが加わり、最終的に一作のWeb小説が出来上がる。… 続きを読む

被嗜虐的な食べ物

僕はホルモンをよく好んで食べる。焼き肉屋に行っても肉はほとんど食べない。予め選べるのならそもそも焼き肉屋ではなくホルモン屋と銘打っている店に行く。ハツやミノの引き締まった肉質と豊穣な味わいに比べたらロースはどこか物足りない。

昔はどんなホルモンもしこたま濃いタレで食べていたと言う。おそらく清掃技術がまだ発達していなかったため、今よりもずっと臭みが残っていたのだろう。幸いにも現代は大抵の店に塩がある。ない店は知らん。

新宿の専門店などに顔を出せば一般的なホルモンに慣れた人でさえ敬遠するような珍しい部位を賞味する事ができる。メニュー表にもそのものズバリで「オッパイ」とか「膣」とか書かれている。もはや食欲どころではなく下心をも満たす勢いだ。ちなみに味はそれほどでもない。… 続きを読む

無賃労働の世界にようこそ

安倍政権の支持者に告ぐ。あなたがたが支持した政権が、昨日、僕たちを金銭に依らず働かせられる法案を衆議院で採決した。そう遠くない将来、ほぼ確実に無賃労働が常態化する世界がやってくる事になる。

どんな社会や組織でも、ずる賢い悪人は表面的にはそうと判らない名称を用いて本質をごまかそうとする。もちろん日本も例外ではない。これまで自民党が提唱してきた「働き方改革」もその典型例であった。

彼らは僕が生まれるよりもずっと昔から企業と資本家のための政党として増長してきたが、今回の件でより多くの人がそれを強く認識した事だろう。「働き方改革」とは実質的に「働かせ方改革」であり、主語は企業や資本家であって労働者ではない。… 続きを読む

日大タックルから和の精神が迸る

古来から日本には数々の伝統芸能が受け継がれてきたが、その中でも日大タックル問題はとりわけ和の精神が色濃く表れていると言える。この件が多くの耳目を集めている理由は単に危険なタックルをしたからではない。

最初の報道を聞いた時は、危険というもののアメフトとはそういう側面もある競技ではないか、などと恥ずかしながらも的外れな感想を持った。しかし、実際に映像を観てすぐに意見が変わった。そのさまはスポーツの枠を軽々と飛び越えてもはや暴力の域であった。

加害者の選手はそれを複数回も繰り返した末に退場させられたのだが、仮に監督がこの事に問題意識を持っていたのであれば初回の時点で彼に注意を与えていなければおかしい。当然、問題の本質は選手個人の行動ではなく監督の指導力不足にあったのではないかという話に移る。… 続きを読む