2021/01/03

構想中の短編小説一覧

■火星統一戦争ドキュメンタリー(仮題)
・あらすじ
月・地球間の宇宙旅行が当たり前になった時代。映画監督の主人公は月から離れた自由宙域で宇宙船を使った新作映画(この時代では現代でいうところの飛行機を使う映画と同等の規模)を撮影していた。

しかし、火星方面より飛来したデブリ群が宇宙船を直撃。航行不能に陥り通信機能を全損した宇宙船は、救援も得られないまま火星へと流されてしまう。この時代、火星は二つの勢力に別れ統一戦争の真っ最中だった。かつて地球連合政府が無責任な介入を繰り返した結果、戦況は泥沼化の一途をたどっており、地球側が完全不干渉を宣言した後も戦争は終わっていなかったのである。

地表に墜落した彼らは幾多もの争いに巻き込まれ、凄惨な宇宙戦争の様相を目の当たりにする。衝撃を受けた主人公はこれらの一切を記録映画として残すことを決意した。
・メモ
きょうび宇宙SFを小説でやるには相当の筆力が要求される。宇宙物理学の知識や裏付けがなければ真に読者を感心させる作品にはならない。実際に書きはじめられるのはだいぶ後になりそうだ。

■自発的禁治産者(仮題)
・あらすじ
幼少の頃から主人公は選択することがとにかく嫌いだった。彼はそこからおのずと生じる責任をただの一欠片たりとも背負いたくなかったのである。しかし何も選ばなければ、選ばなかったことがやはり責任として迫ってくる。主人公はあらゆる責任から逃れるべく、特殊な脳外科手術を受け、自らの主体的意識を取り除こうと考える。
・メモ
語感に優れるため仮題を「自発的禁治産者」としたが、今の法制度では(倫理的にも)禁治産者ではなく成年被後見人と呼ぶことになっている。だが「自発的成年被後見人」では具合が悪すぎる。オチも決まっていない。前述の構想とは異なり内面世界の描写を主とする作品なので、これらの問題が解決すればすぐに執筆できると思う。

■Perso’null’(仮題)
・あらすじ
この世界では大昔に複数の人格を発現させる技術が確立されて以来、多重人格者が圧倒的多数を占める世の中になった。複数の人格が備わればそれだけ多くの才能を持つ可能性が増え、社会に貢献させることができると考えられたためである。

人格の最大保有数は三つまでとされており、運良く三つの人格を発現させた主人公はこのことから将来を嘱望されていたが、彼の人格はいずれも性格に癖がありすぎて日常生活に難儀する始末であった。

学校教育では「他の人格と仲良くしましょう」と習うのに、就活する頃には「主人格を確立して副人格を使役する」ことを要求される理不尽な現状に、彼は悩んでいた。
・メモ
これはなかなか新規性があって優れた構想だと感じている。多重人格者を前提とする異様な空想社会と内面の描写をフックに、学校教育と実社会の間に存在するギャップをえぐり出すような内容を目指したい。仮題はこの物語の結末を示唆するもので誤字ではない。

■Emotion Engine(仮題)
・あらすじ
主人公は生まれつき良心が欠落した精神病質者だったが、ある時、両親に騙されて連れてこられた病院で、大脳表皮に人工的に感情を発生させる装置を埋め込まれてしまう。それ以来、彼の人生は最悪になった。これまではどんな躊躇も葛藤もなく、犬や猫を拾ってきては殺して解剖したり、高所から落ちた動物はどんなふうに死ぬのか観察したりできたのに、今では想像しただけで強い抵抗と嫌悪を覚える。

エミュレートされた感情が主人公の発想を束縛しているのだ。日に日に彼は追い詰められ、鬱屈していくが、それさえも人工感情がもたらしたものと思うと、ますますやりきれなくなった。

やがて彼は人工感情を打破すべく、ひそかに殺人計画を練りはじめた。標的はクラスメイトの同級生の女。ものすごく性格がよくて、美人だから、きっと殺せばひどく罪悪感に苛まれるだろう。しかし、それさえ乗り越えれば主人公は元に戻れると固く信じた。所詮は作りものの感情に過ぎず、必ずどこかに限界が存在するのだから。

決行の日、首尾よく標的の女の部屋に侵入すると、そこにあったのは本人の身体と溶液に満たされたカプセルに浮かぶ脳、そして脊髄だった。主人公が人工的な感情を植えつけられたように、彼女のよく笑う顔、邪気のない美貌、均整のとれた美しい身体もまた、人工の産物だったのである。
・メモ
これは短編というより長編向きの内容な気がする。情緒の荒んだ男女がボーイミーツガールしてグチャグチャな感じになっていくのはテンプレ的なお決まりの展開だが、これをなんとかして社会派SFに昇華させたい。仮題はプレイステーション2に搭載されているプロセッサの名称が元ネタ。

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