2025/07/18

2025年参議院選挙、僕はこのように投票する

今週末、参議院選挙の投開票が行われる。すでに各メディアが報じているように、与党の過半数維持はかなり厳しい情勢だ。政治信条的な面からも制度設計上の面からも政権交代を期待する立場としては、通常これは歓迎すべき状況である。ところが、今回ばかりはそういうわけにもいかない。 なにしろ石破政権は過去の政権と比べて明らかに穏健的であり、表向きは保守自認ながらも実態的にはほぼリベラルと言っても差し支えない政権運営を行っている。特に安倍政権時代によく見られたナショナリズム賛美や居丈高な態度はすっかり鳴りを潜め、夫婦別姓や同性婚に諸手を挙げて賛同するとまではいかなくとも、前向きに検討しないでもないぐらいの姿勢が感じ取れる。 Read more

2025/07/11

ActivityPub実装を自作した:マイクロブログの復権

開発前談 ここ一ヶ月余りの間、ろくに文章も書かずになにをしていたのかと言えばActivityPub実装を作っていた。ActivityPub実装とは、TwitterがXと化した経緯をきっかけに再び注目を浴びたMastodonやMisskeyなどのサーバソフトウェアを指している。 これらは単一のWebサービスではなく「ActivityPub」という共通のネットワーク上に存在する無数のサーバが相互接続を行う形で成り立っている。もし皆さんがたとえば「Misskeyにアカウントを作った覚えがある」と認識していたら、それは数多ある「Misskeyサーバ」のどれかの一つだ。 Read more

2025/05/31

妖精族とのファーストコンタクト

ある日、すし詰めの電車から吐き出されて帰宅すると、そこには妖精がいた。なにを馬鹿な、と思ったが事実として目の前にいる少女は妖精としか言い表しようがなかった。人形に似た華奢な身体と、ささやかに揺れ動く透き通った羽根を持つ彼女に他に適した形容は見当たらない。じきに目が合うと少女は腰掛けていたベッドからぴょんと飛び立って宙に浮き、僕と同じ目線の高さに立った。 「わあ、やっと私が見えたんだ! どうもはじめまして、人間さん」 「どうも、はじめまして……?」 Read more

2025/05/21

革探しの旅Ⅵ:ビジネスバッグ編

いよいよナンバリングがドラゴンクエストとかファイナルファンタジーみたいになってきた。前編を読む必要はあまりない。さて、これまで僕は様々な革鞄を手に入れてきたわけだが、最近はテーラードジャケットを中心とするトラディショナルなファッションを追求していることもあり、またぞろ鞄のラインナップを増やす必要性に迫られた。 いわゆる「ビジネスバッグ」と呼ばれる代物である。短い持ち手がついた片手持ちの四角い鞄だ。よりクラシックな仕様だと前面に錠前が設けられている。かつてセットアップのスーツにネクタイがサラリーマンの前提とされていた時代では、持ち歩く鞄も大抵はこうした形状のものだった。今日でもコンピュータ上で「ビジネス」を表す記号的表現として、そのような形のアイコンを目にする機会がある。 Read more

2025/05/14

魔法少女の従軍記者

この物語は2024年5月に頒布されたフィクション作品であり、実在の人物および団体とは一切関係ありません。 その少女は前線基地の会議室に舞い降りてやってきた。いや、舞い降りたという表現はいささか上品にすぎる。今日は作戦指揮に関わる国連軍の将校や事務方の重鎮、民間関係者、そして我々のような記者が一堂に会する最後の場――あけすけに言ってしまえば、これまで丹念に積み上げてきた法的手続きが実る時――つまり、ついに果実として収穫できる日だった。 そこへ、いきなり基地の天井を突き破って部屋に飛び込んできたのが彼女だ。当然、記者たちはカメラのシャッターを盛んに切りまくってこれに応じる。戦闘機の爆撃にも耐えうるように設計された最新の3Dプリンター基地を秒で破壊せしめた彼女が一体なにを言うのか、なんでこんな大それた真似をしでかしたのか、会議室の全員が固唾を呑んで見守った。実際、軍人としての彼女の性格は多くが謎に包まれている。 〝こんなガラクタの基地で本当に守りを固めているつもり?もっとちゃんとしなさいよ〟 〝3Dプリンター工場による大量生産物は自然破壊の大きな要因であり、抗議としてデモンストレーションを――〟 〝予行練習のつもりだった。後でもう一回やっていい?〟 正直、なにを言ってもらっても構わない。なんであれ絵になる。彼女の影響力は国家元首にも匹敵する。どんな内容であろうとも人々の注目を掴んで離さない。上へ上へぐんぐん伸びていく株にはぶら下がっておくのが得策だ。 しかし、私が予想していたどの台詞とも異なり、彼女は長いブロンドの髪の毛をわたわたとたくし上げてこう言った。額に汗を滲ませ、年相応の焦りを見せた様子で。 「今、何時何分?たぶん、ギリ遅刻じゃないと思うんだけど」 結論から言うと、彼女が基地の天井を破壊して会議室に突っ込んだのは午前八時五九分、五五秒。遅刻五秒前だった。 彼女こそが、私の今回の取材対象だ。本作戦の要、国連指定魔法能力行使者、兼、映画女優。PR上の都合で我々報道関係者が『魔法少女』と呼んでいる人物との出会いだった。 Read more

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