2024/07/23

20世紀生まれのサイボーグ

ふと、眼鏡を変えたくなった。僕にはあまり良くない手癖がある。最低でも5分に1回は眼鏡の位置を直そうとして手が動いてしまう。中指でブリッジを押し上げるだけだから大した手間ではないが、それでも5分に1回ともなればチリツモでかなりの運動量になる。もし累計をまとめてエネルギーに変換できたらドリップコーヒーのためのお湯くらいは沸かせるかもしれない。 そんな手癖が身についたのも8年前に買ったJINSのフレームが Read more

2024/07/10

星新一をくれたお巡りさん

2003年のある夏の日。僕はいつものように本を読みながら下校していた。人も建物もまばらな田舎町の通学路は足が覚えている通りに歩き続けるだけで家に着く。時折、足の裏に意識の一欠片を分け与えると、じきに靴底が土くれを踏んでいる感触を伝えてだいたいどの辺りを歩いているかが分かる。道中に道路が未舗装の区間があるため、そこまで来れば半分は歩いたことになる。 たとえ東北の寒村であっても夏は蒸し暑い。6時間授業を Read more

2024/07/01

革探しの旅Ⅱ:必要にして十分な携行品

前回の精神的続編。革鞄は買わないと言っていたが、あれは嘘だ。幾度となく原宿の工房に通って選び抜いた一品が先週末、約2ヶ月の歳月を経てついに完成と相成った。この鞄には使う前にして僕のライフスタイルが詰まっている。なぜなら来る日も来る日も、工房のありとあらゆる鞄に携行品を出し入れして検討を重ねてきたからだ。そこには永久の課題が存在する。”僕は一体なにを持ち運べば事足りるのか?” 人によってはこの問いは愚 Read more

2024/05/28

本売りまくりⅡ

土曜日 5月27日。コミティアの前日、例によって表参道付近をうろついていたところ――今回は冷やかしではなくちゃんと革鞄を買った――なお出来上がりは7月中旬の予定――合同誌の特装版作りを行うための頭数が足りないと聞きつけ、急きょ東京大学駒場キャンパスへと足を運んだ。指示に従って現場に向かった僕は、気がつくとマジで謎の空間に立っていた。 「槌音広場」とやや物騒な名前が付けられたこの場所、なんとグーグルマッ Read more

2024/05/20

本売りまくり

5月18日の昼下がり。性懲りもなく革小物探しで表参道辺りを徘徊していたところ、今日は自分が寄稿した合同誌が頒布される日だったことに気がついた。そう、かねてより宣伝を繰り返していた戦略級魔法少女合同である。頒布会場はここからなら大して遠くはない。さっそく都営地下鉄に飛び乗り、東京大学本郷キャンパスへと向かった。 この日、東京大学では五月祭なるデカ学園祭が催されていた。同人誌即売会のコミックアカデミーは Read more

2024/05/12

革探しの旅

ふと、身につけている革製品を新調したくなった。僕がいま使っている革製品はだいたいどれも学生の頃に買い揃えたものだ。つまり10年近くは使っている。革製品の寿命は長い。数十年かそこらでは機能的な支障はまず生じない。 だが当然、学生の頃に買ったのだか品物選びには10年前の僕の美意識が反映されている。昔の僕の見る目がなかったとは言わないが、さすがにそれほどの年月が経てばものの感じ方は変わらざるをえない。20 Read more

2024/04/29

束になって浮かれる

思いのほかとんとん拍子に物事が進み、来月から新しい職場で働くことになった。そう、この男、こっそり転職活動をしていたのである。転職先はGoで書かれた非対称鍵暗号基盤を自社製品に持つ受託企業だ。もちろん将来的にGo案件に関わる機会を念頭に置いての話でもあるが、選考の過程でCTOの方と技術選定に纏わる問題意識が一致していたところが大きい。 インフラ寄りのSEからPGに鞍替えする形なので年収はさほど上がらな Read more

2024/04/15

マンション自治会の小政治

ことの始まりは昨年の冬、郵便受けに入っていた一枚の檄文からだった。そこには、ある人物がマンション自治会の次期会長に立候補する旨が記されていた。以前から折に触れて書いているように、僕は埼玉のとある団地に住んでいる。建物は古いとはいえ駅まで徒歩10分、大型スーパーまでは5分足らず、近隣には繁華街もあるなど周辺環境が非常に良く、その割に家賃も安い。 代わりに、マンション自治会への参画が半ば義務付けられてい Read more

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