2022/06/24

2022年参議院選挙 既成政党以外まとめ

本エントリは2022年の参議院選挙に立候補する既成政党以外について記す。既成政党とは国政に議席を有しているか、もしくは直近に有していたことがある政党を指す。そういう権力を持った強い存在は勝手に誰もが注目するだろうから、ここは一つあえて珍獣のうなり声でも聞いてやろうといった趣向である。

参政党


■思想傾向:右派
■特徴要約:反ワクチン、自然主義
今回の選挙で本当に議席を獲ってしまいそうな勢いを持つ政党。5万超もの党員数を誇り、全国的に候補者を擁立している。 「ゴレンジャー」 と呼ばれる5人の著名人(武田邦彦氏など)を事実上の指導者とし、独特の言い回しを用いた演説を得意とする。各地の街頭演説で多数の聴衆に囲われている様子を見るに、実際にこの手法は効果を発揮しているようだ。

たとえば、彼らの演説ではワクチンは 「お注射」、コロナは 「流行りの病」 と言い換えられている。ワクチンの有効性やコロナの危険性を低く見積もる旨の揶揄なのだろう。事実、参政党主催の講演会の画像を確認するとマスクの着用率が際立って低い。右派政党にしては珍しく環境保護を重要政策に掲げているためか、おそらくはこういった自然主義が諸々のコロナ対策を否定する姿勢に繋がっていると考えられる。

他の政策は典型的な右派のそれである。戦後教育と外国勢力によって奪われてきた大和民族の誇りを取り戻すとの論調を基に、軍事力の増強愛国教育の推進外国資本の参入規制などを主張している。

どうやら参政党の党勢拡大にはイデオロギーの強い元自民党支持層が深く関わっていそうだ。というのも、岸田政権と保守野党の日本維新の会はどちらも愛国色が薄く、こうした類型の自民党支持層の受け皿にはなれずにいたからだ。そこへいくと参政党はだいぶ彼らの理想に近い。

さらに、反ワクチン勢力に至ってはこれまで受け皿そのものが存在しなかった。参政党の指導者たちの本音は知る由もないが、結果的に政治へのモチベーションが高い勢力を手中に収めた点では他の諸派を大きくリードしていると言える。

日本第一党


■思想傾向:右派
■特徴要約:排外主義
党首の桜井誠(本名:高田誠)氏は'00年代のインターネットに詳しい者の間では特に悪名高い人物である。

彼は在日韓国人にのみ与えられる「在日特権」なる既得権益の存在を信じており、自らが主宰する政治団体「在日特権を許さない市民の会(在特会)」を率いては、ネット・リアルを問わずありとあらゆる場所で排外的な主張を繰り広げてきた。

いわゆる 「ネット右翼(ネトウヨ)」 が現実に飛び出してきた顕著な例の一つに数えられる。一連の活動はやがてかなりの数の信奉者を抱えるまでに成長する。

最終的に在特会は運営方針の対立や、桜井氏自身の不祥事(寄付金の横領疑惑)が原因で衰退を迎えるも、会長を退任した同氏が2016年に「日本第一党」を結党して現在に至る。

当然、本政党が掲げる政策は前述の参政党をはるかに上回る過激さで、愛国教育の推進や軍事増強はもちろん、核兵器の保有国防義務の明記実行犯以外も逮捕拘禁可能なスパイ防止法の設立自主憲法制定および不敬罪の復活、果ては韓国との国交断絶をも主張している。

以前はネット上で悪目立ちしていた彼らであったが、今後は耳目を集めることさえ難しくなるだろう。右派論壇の中心は今や民族対立ではなく男女対立に移って久しく、民族差別的な言説はTwitterでもYoutubeでも即座に排除せしめられる。彼らの主張が市井の人々に届く機会はもはや失われている。桜井氏の印税収入が追いつかなくなり次第、おのずとこの政党も解散を余儀なくされると思われる。

幸福実現党


■思想傾向:右派
■特徴要約:宗教、反再分配、反LGBT
幸福実現党は新興宗教「幸福の科学」を支持母体に持つ右派政党である。主要政策には 「日本の伝統的な家族観を守る」 との文言が並び 「性的マイノリティの行き過ぎた保護に反対」 と主張している。すなわち広義の反LGBTと捉えられる。近年は右派の間でも同性愛容認の動きが広まってきている中、頑なに反LGBTの姿勢を崩さないのはいかにも教条的だ。

前述の日本第一党はなにかと韓国を目の敵にしていたが、幸福実現党は中国を敵視している。これは中国共産党(というよりは共産主義)が宗教に不寛容であることを考慮すると、わりあい理解可能な方針と言えなくもない。幸福の科学の経典にはマルクスやレーニンは地獄行きと記されているらしい。僕も学生時代はよくマルクスの著書を読んでいたので、彼らの教義に従うのなら同じく地獄行きかもしれない。

彼らの反共産主義(社会主義)思想は経済政策にもよく現れている。他の諸派は各種税金の累進性を高めたり、社会福祉を拡充させたりなど、いわゆる大きな政府を志向する向きが強いが、幸福実現党はそれらの再分配政策を 「社会主義そのもの」 と非難し、まさしく宗教的道徳に基づいて 「神仏に向かって自らを向上させようとする自助の精神が必要」 と主張している。

知名度の割に未だ国政に一つの議席も得られていない原因は、兎にも角にも宗教色が前面に出すぎているところにありそうだ。公明党が創価学会なのはおよそ誰でも知っていることだが、少なくとも彼らは政策面で宗教臭さをうかがわせるような主張はしていない。もっと先達の手腕に学ばなければ今後も議席は獲得できないだろう。

新党くにもり


■思想傾向:右派
■特徴要約:ウイグル人候補者擁立
政策を読む限りではオーソドックスな右派政党 (反グローバリズム、反中、皇統護持、軍事増強、愛国教育) といった感じで目立った特色は見当たらない。強いて挙げるなら他の諸派と比べてやや落ち着いた雰囲気は感じられる。落ち着いているだけでこれらの政策が実現できるわけではないが、多少なりでも品性があるのは悪いことではない。マスコットキャラクターは変えた方がいい。

右派政党にしては珍しく外国にエスニシティを持つ候補者を擁立している。神奈川選挙区立候補者のグリスタン・エズズさんはウイグル出身の女性で、現在は帰化を経て日本国籍を得ている。新疆ウイグル自治区といえば中国共産党による民族浄化や洗脳教育が行われているとされている地域だ。彼女自身もウイグル弾圧に対する問題意識から出馬を決めたと言う。

新党くにもりとしては反中国票を見込んでの擁立だったのだろうが、残念ながら右派からは大して支持されていないようだ。Twitterで検索してみると 「愛国的なら出身は気にしない」 との声もあれば 「純血の日本人でなければ信用できない」 といった声もちらほらと並ぶ。一部の右派にとってウイグル人は同情の対象ではあっても、自分たちの代表にはふさわしくないということなのかもしれない。

個人的にはどんな理由であれ、外国出身者に政治参加の機会が与えられるのは良いことだと思う。なにもウイグル弾圧についてのみ発言が許されているわけじゃあるまいし、たとえ右派の立場からでも外国出身者ならではの主張を展開する余地はあるはずだ。この擁立に関しては素直に応援したい。

維新政党・新風


■思想傾向:右派
■特徴要約:歴史は長い
主張こそ典型的な右派政党だが、実はその歴史は古く1995年に結党されている。党名に「維新」と付いているが「日本維新の会」とは無関係である。2007年の参議院選挙で17万超の票を得たことで多少の知名度を稼いだものの、以降は他の右派勢力に押される一方で影の薄さが拭いきれない。他の諸派と比べてSNSやYoutubeの使い方も上手いとは到底言えない。

2009年に右派勢力が強行した「フィリピン人家族追放デモ」に対して 「民族差別は許さない」 との声明を発表したのは評価に値するが、この声明が彼らの党勢を回復させることはなかった。なにしろ当時は前述の桜井誠氏率いる在特会が猛威を振るっていた時代だ。正論がものを言うかは相手による。

ただでさえ自民党よりさらに右側を目指す以上、むやみに倫理道徳を振りかざしていては右派の支持なんてとても期待できないのではないか。今回の選挙活動もあからさまに精彩を欠いている。抜本的な改革なくては党の存続すら危うい。

ごぼうの党


■思想傾向:ごぼう
■特徴要約:ごぼう
すべてが謎に包まれた政党。公式サイトを読んでも結局なにが言いたいのかまるで解らない。Twitterで指定のハッシュタグを設けた投稿を行う 「ごぼうチャレンジ」 なる運動を実施しているが、賛同者を見ても一貫した政治信条は確認できず、せいぜいごぼうの画像が添えられる程度に留まっている。しかしその割には俳優の山田孝之氏や歌手のGACKT氏がチャレンジに参加したりなど、芸能界とのコネクションがうかがえる一面もある。なんだか不気味だ。

現状、この政党について言えることはマジでなにもない。 著名な芸能人を動員できている点と 「ただシンプルに私たちの笑顔と喜びを守ることだけを考える」 との文言から、エンターテイメント産業の振興を目的とした政党と見なせなくもないが、主張を曖昧に濁すような諸派が十分な票数を得られるわけがないので、これらの選挙活動の意図は依然として不明のままだ。

比例区に11人も擁立している様子から党の資金源は相当に豊富そうだが、金持ちの道楽にしてもさすがに金をかけすぎている気がする。なんならこの11とかいう数字もごぼうっぽい。まさかこんな風に猫も杓子もごぼうと関連付けさせて洗脳するのが目的だったりしないだろうな。

まとめのまとめ

2022年参議院選挙の諸派は右派とごぼうで占められた珍妙な様相を呈している。以前の選挙では中核派で構成された政党や、環境保護を掲げる左派政党などもいたが今回は出馬には至らなかったようだ。

諸派の政策はごぼうの党を除いて共通点が多く見受けられる。とりわけ 「反グローバリズム、軍事増強(改憲)、愛国教育、移民抑制」 は完全に一致している。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で右派的な政策の需要が高まっているのだろう。

その上で投票行動を予想した場合、おそらく反ワクチンや自然主義なら参政党、レイシストなら日本第一党、反再分配や反LGBTなら幸福実現党……といった具合に投票先が固まっていくと見られる。他方、新党くにもりと新風は独自性の弱さゆえ諸派の中でも特に苦戦を強いられそうだ。

最後にうっかり流れで「ごぼう好きならごぼうの党」と書きかけたが、冷静に考えたら別にそんなことはなかった。以上、後は各自で判断されたし。

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