2022/07/04

個人情報と引き換えに得たもの

日本國政府による個人情報切り売りキャンペーンが目下実施中である。なんでもマイナンバーカードと呼ばれる特に使い道のない板切れを取得した後、健康保険証と銀行口座情報を献上すると畏れ多くも最大2万円分のマイナポイントが下賜されると言う。マイナポイントはPayPayをはじめとする各種決済サービスのポイントと交換することができる。すなわち仮想の諭吉と英世だ。

僕はマイナンバーカードの取得を条件に得られる5000ポイントを既に拝領済みだったため、今回の事業で新しくもらえるマイナポイントは15000ポイントまでとなる。日頃、Arch Linuxとかいう異常者専用ディストリを常用し、公共Wi-Fiに接続する際はVPNを欠かさない程度には自由とプライバシーに敏感なのに、わずか15000円ごときであっさり個人情報を明け渡してしまうのだから文字通り現金なものだ。

事業開始当日、いち早く15000マイナポイントをPayPayポイントに兌換した僕はYahooショップに赴いて即座に椅子と鍋を買った。なにしろ以前の椅子ときたらあたかも脱皮しているかのように合皮の破片を床に撒き散らすひどいやつだったのだ。しかし機能自体に支障はなく今まで買い換えるほどには至らなかった。

いっそそのまま本当に脱皮して成虫ならぬ成椅子(超カッコいい)にでもアップグレードしてくれたら助かっていたのだが、所詮はゲーミングチェアブームに乗っかってノリで買っただけの代物に過ぎない。もう二度と合皮の椅子は買わん。ぶっちゃけ部屋の雰囲気と合わなさすぎて買った当初から割と後悔してた。

その点を踏まえて新しく買った椅子はアイリスオーヤマのMOC-61だ。僕はどうも椅子の違いが判らない貧乏尻らしく、周囲の友人らがこぞって使っているアーロンチェアだのバロンチェアだのエルゴヒューマンだのの良さがいまいち理解できないでいる。であれば、ヘッドレストがついたメッシュのハイバックチェアならなんでも構わんだろうと半ば開き直って選んだのがこれだった。実際、マジでなんの問題もない。

部屋の雰囲気にもだいぶ溶け込んでいるし、申し訳程度にでもランバーサポートがついているおかげか腰への負担も少ない。上に挙げた高級椅子と比べるとおそらく耐久性に難があると想定されるが、そうは言ってもたかが1万円するかどうかの椅子だ。せいぜい1、2年も座れたら上出来じゃないか。壊れたらまた買えばいい。

続いて鍋の話。ジオ・プロダクトの片手鍋をサイズ違いで2つ買った。椅子はケチったくせに鍋は高級品を買おうとする異常性。しかし多層ステンレス鍋は単に超カッコいいだけではなく、テフロンの鍋には不可能な無水調理だとか揚げ物だとかができる。単純な煮込み料理でさえその蓄熱性の高さゆえかなりの差が出ると言う。欠点はやや重いことと注意しないと焦げ付くところか。用途の一部がかの有名なストウブやル・クルーゼと似ているがこっちはオールラウンドに使える。

到着当日からさっそく色々と試してみた。ポトフは材料を切って鍋に入れて水とコンソメと塩その他で加熱するだけの簡単料理だが、これで煮込むといつもより味のまとまりが良いような感じがした。ジオ・プロダクトの製造元が謳っているウォーターシール効果とやらの利点が表れたのかもしれない。

炊飯も試した。僕はもともと炊飯をコンロでやっていて専用の炊飯鍋も持っているが、できると言うからには一応試しておきたいのが性分。結論を言うといつもと同じ水分量で若干硬めに炊きあがった。硬い米が好きな人は気に入りそうな塩梅だ。底に米粒がこびりついてて洗うのが面倒かと思ったが軽くこすったら取れた。

そして忘れてならないのが揚げ物。残念ながら「蓋を閉めて揚げられる」のが利点ゆえ、肝心の動画は唐揚げが揚がる音しか提供できない。キッチンを自分で掃除しない輩にはいまいちピンと来ないだろうが、揚げ物の油が辺りに飛び散らないのはまことに革命的である。

かくして僕はテフロンの鍋と完全に決別した。あれはあれでノーメンテで扱える気軽さがあったが、より少ない道具で多くの目的を達成できるようすることが僕の調理スタイルだ。ある意味、マイナポイント事業が最後のひと押しになったと言える。あれこれのたまっても僕の銀行口座なんてとっくに知られているだろうし、健康保険に至ってはどのみち元から国営なので、まあそんなに分の悪い交換条件でもなかったな。

ちなみに、中華鍋以外はこんな感じで収納している。

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