2025/01/21

ルイーズ・ブルジョワ展に行ってきた

先週末、ちょっとした思いつきから「ルイーズ・ブルジョワ展」に行ってきた。かなり刺激的な内容ながら人気を博しているらしく、前提知識を備えていなくてもそれなりに楽しめるのではないかと期待した次第だ。結論から言うと、この目論見は大いに当たった。 本展のテーマは良くも悪くも非常に明快で分かりやすかった。各所でアイコン的に押し出されている展示物が蜘蛛の大型彫像なのは知名度を重視しての判断と思われるが、母性の持つ二面性を暴き出すという真意を伝えるにはかえって抽象的すぎたきらいも否めない。デート向きのおしゃれな美術展だと早合点して行ったカップルなどは少々気まずい思いをしただろう。 Read more

2025/01/14

ローファーのつま先

なにかの比喩ではない。本当にローファーのつま先の話である。前回の精神的続編。ナンバリングタイトルを付けると客離れが起きるので新作を装うやつ。最近はローファーのことばかり考えている。靴に興味がなくても学生の頃に履いていた人は少なくないだろう。靴紐いらずで気安く履けてどんな服装にも合う革靴のありがたみを、特に夏場にはよく実感させられる。 なにしろ日本の夏は蒸し暑い。アメリカやイギリスの気候とはとてつもない隔たりがあり、この地でトラッドな装いを貫くのは苦行に等しい。ポロシャツにチノパンのよくある組み合わせにしてもストレートチップが似合うほどのフォーマルさには及ばない。したがって、おのずと環境に合わせて革靴の方をカジュアル寄りにする必要が生まれる。 現状、僕の今の手持ちでカジュアルなのはスタンスミスかチロリアンシューズかワークブーツだ。ワークブーツは基本的に雨用かウォーキング用なのでそう頻繁には使わない。となると日常的な選択肢はスタンスミスかチロリアンしかない。どちらもお気に入りではあるものの手数に欠ける構成だと言わざるをえない。せめてもう一つ選択肢が欲しい。 Read more

2024/12/04

革探しの旅Ⅴ:革靴編

前回の外伝的前日譚。観ていない人も多いので話が合わせづらいやつ。身につける位置こそ違えど鞄と靴には大きな関連性がある。クラシックな革鞄を選んでギラギラのランニングシューズを履くと、一般にトータルコーディネートの難易度は飛躍的に高まる。同様に、スポーティなリュックを選んでピカピカのドレスシューズを履くのはかなり困難だ。 逆に、鞄と靴の意匠とカラーリングが合っているともうほとんど完成形に近い。なにも手がかりがない中から探るよりも、絶対に譲れないアイテムを前提にセットアップを組む方がファッションでもゲームでも効率的にビルドを構築できる。上級者向けと見せかけて実は手堅い戦略なのだ。 もっともこれは僕が何年も惰性で履き古した靴を総入れ替えするための方便に過ぎない。なにしろ鞄と同じく靴も一、二足では用を足しきれず、シチュエーションに備えて何足も揃えておかなければならない。そんなわけで秋口から今まで僕はずっと、様々な店で革靴を物色していた。 Read more

2024/11/21

塩売り

ある時、サークル主のendenが言った。「食塩水に漬けてみたんですけど放っておいたらなんか良い感じになったんですよね、これで本を作りたい」手に持った容器には塩の結晶が浮いた紙だか発泡スチロールだかが入っていた。「え? これで……本を……?」数ヶ月後、この話は現実のものとなる。 当サークル『Gradierwerk』は異常装丁本の制作を行っている。第一弾の『戦略級魔法少女合同 黒点』において装丁が高く評価されたこともあってか、彼はさっそく次のアイディアを試したがっていた。塩の結晶が固着した本のイメージから、作品のテーマは環境について幅広く取り扱うSFに決まった。その名も『環境SF合同 圏界面』だ。後ろの2文字は僕が考えた。 Read more

2024/10/15

(企業側で)転職フェアに行ってきた

土曜日。休日出勤である。本来は先輩の社員が行く予定だったのだが、代休目当てに(平日はゴルフ場が安い)仕事を強奪したのだ。人から奪い取って得する上に感謝までされることってなかなかない。しかし、あまりにも目先の欲に囚われて請け負ったものだから、当日の段取りがろくに頭に入っておらず電車の中で一夜漬けならぬ朝漬けをする羽目と相成った。 結局、典型的な指示待ち人間と成り果てた僕は会場に着くやいなや、右に貼れと言われた用紙を貼り、左に置けと言われたプレートを置き、気づけばそれなりに見栄えのするブースが出来上がっている。同様に、前後左右に並ぶ他社のブースも各々の特色をめいいっぱい凝らしたであろう装飾で満ちあふれていた。 Read more

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