■2022年5月18日追記:インストーラの更新に合わせて新しく記事を書き直したので、導入手順の説明が目当ての読者はこちらを参照されたし。
エイプリルフールではない
2021年4月1日、Linux界隈が騒然となった。なんとあのArch Linuxにインストーラが付属したのである。
インストールメディアにインストーラが付属するようになりました
2021-04-01 - Giancarlo Razzolini
インストールメディアにガイド付きのインストーラが含まれるようになりました。
このインストーラを使う場合のサポートについては (インストールガイドに基づく) デフォルトのインストール方法と他のインストール方法の関係とあまり変わりません。
インストーラを使ってインストールする場合にサポートを求めるときは、インストーラを使っていることを明示し、必要に応じて archinstall のログを提供するようにしてください。
引用元:archlinux.jp
狙いすましたかのような日付の報せに当然、誰もがエイプリルフールを疑った。しかし、インストーラのarchinstallは数日前からパッケージマネージャに登録されており、当該のリポジトリはさらに以前から存在していたことが判明する。
とても興味深い。かつてあれほど苦しめられたArch Linuxが一体どれだけ簡単にインストールできるようになったのか。せっかくの土日なので日記がてら簡単にインストールバトル(ガイド付き)の内容を記録する。なお、このバトルはVirtualBox上で実行されているので、実機でのインストールの際は自身の状況に適宜置き換えて行われたし。
ただし、他のOSとのデュアルブートを考えているユーザには注意点がある。 件のインストーラは簡易的な作りなので単体ではパーティションを切ることができない。従って、これに関しては他のOS側で予めやっておく必要がある。やり方はググってくれ。
記録
UEFI環境(BIOS環境ではインストーラを使用できない)でArch Linuxをインストールメディアから立ち上げると、ローディング画面の後にカバか牛っぽい変な動物のアスキーアートが表示される。曰く、有線なら自動的にインターネットに接続されるが、無線の場合は追加の設定が必要とのこと。指示の通りにしよう。
無事にインターネットに接続されていれば、偉大なるコマンドsudo pacman -Syu
を打つことが許される。更新後、おもむろにarchinstall
と打ち込みエンターキーを押下すれば、もはやバトルの勝利はほぼ確約されたようなものだ。中学生レベルの英語が怪しいと多少は苦労するかもしれない。
まず最初にキーボードのレイアウト設定を求められる。一覧に日本語はないが?
でhelpを呼び出してからjp
と入力するとサジェストされる。英語キーボードの場合はus
を選択するべし。あえてバトルの難易度を上げたいなら他のレイアウトでも構わないが、少なくとも次のダウンロード先の指定は絶対にjapan
を選んだ方がよい。違う場所を選んでも無駄に時間がかかるだけで別に難易度は上がらない。
続いてインストール先のドライブを指定する。ハマりどころかあるとしたらここぐらいか。誤って使用中の領域に上書きしてしまうと当然そこに含まれるデータは抹消される。確定する前に最低三回は目を見開いて確認すること。ファイルシステムはこだわりがなければext4
かxfs
のどちらかになると思われる。両者とも多くのディストリビューションにデフォルトで採用されている。SSDなどの高速なドライブを使用しているならxfsの方が好ましいと聞く。暗号化の是非を訊かれるが、ホビーユースなら特に必須ではない。ホストネーム、rootパスワード、個人ユーザの設定を済ませるといよいよお待ちかねのデスクトップ環境選びに入る。
が、期待に反してなぜかごく限られた選択肢しか提示されない。i3やSwayはおろかCinnamonやXfceもない。いくら初心者を意識しているとはいえさすがにこれは何とかしてほしい。初手から好きなデスクトップ環境を選べることがArch Linuxの醍醐味の一つのはずだ。ここまでで面倒な設定はあらかた済んでいるので、この箇所だけ空欄のままskipして後から好きなものを導入する手もあるが、それでは元々の趣旨に反してしまっている気がしてならない。うーん、一点減点。
■訂正。現在のバージョンではi3を含む多様なデスクトップ環境が提示される。
次にグラフィックドライバを選択する。実機に適したものを選べばよい。追加のパッケージを指定できるが、デスクトップ環境とターミナルエミュレータが導入されていれば後から都合をつけられるのであまり考え込む必要はない。先の選択肢でなにがしかのデスクトップ環境を選んだ人は自動で紐付けられたユーティリティ類がすべてインストールされるため尚更困らない。手慣れたユーザにとっては完全に余計なお世話だが、初心者には適切な仕様なのかもしれない。どのみち気に食わなければいつでも消せる。
ネットワークインターフェイスの選択は個別指定に不安が残るようなら一番上が無難。また、タイムゾーンは日本国内にいるならAsia/Tokyo
と入力すれば問題ない。最後に、指定した項目をまとめたスクリプトが表示され、エンターキーを押すと実作業が開始される。もしやり直したければこの段階なら再起動で一からやり直せる。
これが何を意味するか。もはやArch Linuxのインストールは必ずしもバトルではない。荒野を征く強行軍ではなく、コンクリートで舗装され、街灯に照らされた道を歩くに等しくなってしまったということだ。インストールバトラーの地位はGentoo Linuxに明け渡された。
インストール完了後、ドライブからArch Linuxを起動できていれば導入したデスクトップ環境のログイン画面が表示される。以降はGUIでの環境構築なので特に困らないだろう。いや、むしろここからが一番楽しい局面と言っても過言ではない。
まとめ
Pros
・とにかく簡単。ググる必要さえない(圧倒的利点)
Cons
・デュアルブートを望むユーザへの配慮がまだ不足している
・ブートローダは選べない(systemd-bootが導入される)
こうして列挙していくと欠点ばかりが目立つようだが、インストール作業の易化具合は本当にすばらしく、難易度の高さから二の足を踏んでいたユーザにとってはかなり理想に近いインストーラに仕上がっていると感じた。これのおかげで移行する人が増えるのはまず間違いない。
さあ、次は君の番だ。コンピュータをいじる楽しみを共に分かち合おう。