2021/11/23

null年ぶりのテニス

まるで定年退職したての老人みたいなタイトルだな。いかにも「時間に余裕ができたのでこれからは気ままにテニスでも楽しみます」って感じの風情だ。だが僕は違う。僕はまだピチピチの28歳だし、小学生の頃にテニスをしていたから {null} 年ぶりというのも嘘ではな縺??ょョ滄圀縲√°縺ェ繧顔悄蜑」縺ォ繧?▲縺ヲ縺溘?ゅさ繝シ繝√b縺、縺代※繧ゅi縺」縺ヲ逵悟、ァ莨壹↓繧ょ?蝣エ縺励◆縲

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は? ……おい、テキストがバグってるぞ。どこかの横着者が勝手に同じパターンだと決めつけて、前回の記事から文字列を拝借しやがったらしい。言っておくが僕はテニスなんてこれまでに一度もやった試しはない。やったことがあるのはマリオテニスくらいだ。ちなみにマリオテニスはゲームボーイカラー版が一番面白い。

一昨日、僕はテニスをプレイした。マリオテニスじゃないぞ。リアルなテニスだ。例によって、僕の属する30代独身男性中心のコミュニティでテニスをやる流れになったからだ。元々は秋口に集まる予定だったが、僕が2回目のワクチン接種を済ませていなかったり、雨が降って中止になったりと色々な不都合が重なってなかなか集まりきれなかった。今回もまたぞろ雨天に見舞われるかと思いきや、かろうじて空が曇りで踏みとどまってくれたおかげで無事開催と相成った。

ところが当日、予約していたテニスコートに定刻通りに到着できた者は、実質誰一人としていなかった。 いや、厳密には僕だけは間に合わせようと思えば間に合わせられた。しかしDiscordのチャット欄に続々と立ち昇る寝坊報告に絶望した僕は、遅刻を承知で最寄り駅の吉野家で朝飯を食べることにしたのだ。友人たちの中で僕が一番目的地から遠い場所に住んでいるのにこんなことってありえるか?

間もなく牛丼並盛を食べ終えた僕は駅前で友人の一人と合流。テニスコートの利用料金を遅刻魔連中の代わりに全額立て替えたのは彼だったので唯一ギルティ認定を免れたと言っていい。定刻をゆうに20分は過ぎた頃になってポツポツと頭数が揃いはじめた。最後の一人だけは大遅刻確定だったのでわれわれ一同はテニスコートへと移動した。

してみると、やはりテニスコートというやつは相当に広い。シングルだとこの半面を一人で支配しなければならないのだから大変だ。お遊びのラリーなら互いに打ちやすい場所に向かって打つだろうが、試合の場合は逆に相手を動かして疲弊させる形に打ち込んでいくのだろう。アキレス腱を負傷するテニス選手が多いのもうなずける話だ。

参加者5名のうちテニス経験を積んだ者は2人しかいなかったため、われわれは一面のテニスコートを4人で分割して適宜交代しながらショートラリーを行った。肝心の僕はといえば、案の定一筋縄ではいかなかった。距離の短いラリーならバトミントン感覚でいけるかとも思ったが、硬球なので反射的にラケットを振ると簡単にすっ飛んでいってしまう。

試合であってもお遊びであってもテニスコートの内側に球を落とせないようでは話にならない。しばらくは球を追いかけたり追いかけさせたりする状態が続いた。そうするといかにもスポーツ然とした心地よい疲労感が肉体にだんだんと伝わってきた。

じきにテニス経験がある方の友人から有益なアドバイスを授けられた。友人曰く、ラケットは包丁を持つように握り、できるだけ面と平行に球を接触させなければならないらしい。僕はいつもラケットの面が上に向いているから不必要に球が浮き上がり、ゆえに余計な方向に飛んでしまうとのことだった。

言われてみれば、テニスマンの友人が球を打つ時の所作はなんというか――動きに緩急がついていて――独特のキレがあった。それだけではない。球にスピンがかかっている。友人曰く、このスピンも重要らしい。大まかな理屈は、ゴルフでウェッジを扱う際のテクニックと似たようなものだと理解した。あれも当て方が大切だからな。

言われた通りにぼちぼちラケットを振るうちに数回に一回くらいはまともな球を繰り出せるようになった。運動神経の出来は別として、日課のランニングや筋トレもあながち無駄ではなかったと見える。結局、僕は丸々3時間ほとんどろくに休憩もとらずにテニスコートを動き回った。後半はショートラリーではなくそれらしいサーブから入るラリーをやってみたりもした。運良く10往復近く続くこともなきにしもあらずであった。

総合的には実に充足感に満ちた体験だったが一つだけ――貰い物とはいえテニスラケットのメンテナンスを怠ったのは失策を犯したと言える。グリップのテープを巻き直さなかったせいで、なにやらベタついた得体の知れない黒い塗料が手にべったりとついてしまったのである。こいつを洗い落とすのには相当な手間を食わされた。

プレイ終了後、われわれ一同はちょっとした思いつきでバスに乗り込んだ。帰りにラーメンでも啜ろうかと話がまとまったタイミングで、ちょうどバスが目の前を通り過ぎていったのだ。バスの行き先は小岩駅。言わずと知れたラーメン激戦区だ。友人の一人が急に「追いかけるぞ!」と叫んで走り出したので、われわれも疲れ果てた肉体に鞭を打って後を追った。

苦労の甲斐あり、ほどなくしてわれわれはラーメン、厳密にはまぜそばだが……にありつくことができた。テニスでめちゃくちゃ身体を動かしてからの二郎系ラーメン、もとい二郎系まぜそばと来たもんだ。あたかも体育会系男子学生の青春を追体験しているかのように思われた。スマートウォッチ曰く900kcal以上ものカロリーを消費したおかげか、200gの麺と野菜とチャーシューはいとも容易くスルスルと胃の中に運ばれていった。

帰宅後は泥のように眠った。朝が早かったので一眠りしてもまだ夕方だった。驚くべきことにデカ盛りのまぜそばを食べたのに腹の音が空腹を知らせてきた。3時間テニスの消耗度合いは伊達ではない。僕は簡単な夕飯を食べ、ベッドでだらだらと過ごした後、また眠った。

こうした生活はいつまでもできるものではない。肉体が十全に働き、かつ責任の薄い年頃に限られた、ある種の特権的娯楽に他ならない。言うなれば、富豪的疲労だ。僕は富豪的疲労には金に代えがたい価値があると思っている。

©2011 Rikuoh Tsujitani | Twitter | RSS | 小説