2021/04/12

コスパに優れたメールサーバ「mailbox.org」

かつてはメールサーバをVPSで運用していたが、当ブログを静的サイトに刷新したことを契機にVPSそのものをやめてしまったので、今までは暫定的にConoHaでレンタルしていた。競合他社の「さくらのメールボックス」はどえらく激安だが、独自ドメインだとSPFにもDKIMにも対応しない粗末な仕様だったので候補に入らなかった。

とはいえ、そうは言っても月額550円はさすがに高い。当時はあれこれと他に注力したいところがあったので一応払うだけ払ったが、こうして諸々の環境が整って落ち着いた今となってはおのずと再検討の余地が生まれてくる。エンジニア界隈をざっと眺めてみると、やはり僕のように独自ドメインのメールアドレスを運用している変わり者が少なくない。

まずもって候補に挙げられるのはProtonMailTutanotaである。これらは巨大テック企業にありがちな個人情報の詐取がなく、オープンソースで開発されていることから界隈で強い人気がある。なにより、独自ドメインにこだわらなければずっと無料で使える。とりあえずメールアドレスを一つ欲しい人はもうこれで決まりかもしれない。

しかし僕は独自ドメイン運用が必須なので有料プランの価格は無視できない。ProtonMailの気になるお値段は月額4ユーロ。高すぎる。対してTutanotaは月額1ユーロ。ふむ、どうやら勝敗は決したらしい。だが、Tutanotaには致命的な欠点があった。IMAPが利用できない。つまり、Tutanota自身が提供する公式のアプリケーションでなければメールの送受信ができない。 ThunderbirdやSparkは使えない。うーん、そいつは困る。TutanotaはE2E暗号化が十全に行えないことを理由にしているが、こんなのはセキュリティを盾にした新手のロックインみたいなものだ。好きなアプリケーションが使えないなら少なくとも自由ではない。

メールサーバ探しが暗礁に乗り上げかけたところ、幸いにもこんなブログ記事を見つけた。記事によるとmailbox.orgというサービスが優れているようだ。月額1ユーロでなんとSPFにもDKIMにもDMARCにもIMAPにも対応している。もちろん、独自ドメインにも対応済み。ただし永年の無料プランはなく、いずれは金を払わなければならない。単にメールアドレスが欲しい人にはオーバースペック気味だが、僕にとってはベストマッチに思えた。さっそくConoHaのメールサーバを引き払い、DNSレコードをmailboxに向けて書き直した。

mailboxは先に挙げたサービスほどセキュリティやプライバシー保護を前面に押し出してはいないが、それでも厳格な検査をパスしたドイツ企業によって運営されているとのことだった。そういえばTutanotaもドイツ企業だったし、ProtonMailはスイス企業だった。こういった繊細な部分に気を遣うのはいかにも欧州的だという感じがする。余談だが、アメリカにオフィスがないのはメリットに入るらしい。

日本ではなあなあで済まされたアメリカ政府による各国政府要人の盗聴事件はドイツではかなり深刻に受け止められたと聞くし、きっとわれわれとは個人情報に対する感度が違うのだろう。他方、LINEのサーバが中国や韓国に設置されていた件は、人々の反応を見る限りではセキュリティ意識というよりはイデオロギーや偏見の方が先に立っているように見えた。彼らはたぶん、サーバの場所がアメリカだったらそんなに文句を言わなかったんじゃないか。

話を戻そう。mailboxの方は特に問題なく、宣伝通りの機能性とコストパフォーマンスを持ったサービスとしておすすめできるのだが、一つだけ注意点が見つかった。ここのDKIM公開鍵は2048bit長なので、ドメインを管理しているレジストラによっては対応していない場合がある。実際、僕が使っているスタードメインはTXTレコードの文字数上限が原因で設定を受け付けなかった。今後、隙を繕って別のレジストラへの移管を検討しなければならない。

ちょっと調べたところでは、Gandiが良さそうに感じた。No Bullshitを標語に掲げ、クリーンな企業運営と広告への非依存を謳っており、利用者の権利を尊重している。.jpドメインの更新料が安いスタードメインと比べると年1000円ちょっとほど割高になってしまうが、こういった取り組みは支援に値するように思う。そんなGandiは例によって欧州の企業(フランス企業)である。ほんと君ら意識高いな。

意識が高いといえば、Tutanotaとmailboxは再生可能エネルギーでサービスを運営しているそうだ。この情報はWebページ上でもけっこう強めにアピールされている。ってことは、決して少なくない人々がそれを気にかけているんだろうな。 まったく恐れ入ったよ。こういう話を聞くと反射的におちょくりたくなってしまうが、間違いなく君らが正しい。

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