2025/12/31

論評「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」:白人酋長ものからの脱皮

前作から3年。待ちに待ったアバターの最新作は、果たして期待通りの作品であった。より強化された映像美に加え、前作で投入されたHFR(ハイフレームレート)と前々作の3D映像を融合させ、3DかつHFRかつ3時間超の映画という超重量級のコンテンツへと進歩を遂げている。 正直なところ、ここまでコンテンツが豪華になると、さながら満漢全席で胃もたれを起こす客のごとく、途中でついていけなくなってしまう人も出てくるだろう。かくいう僕も尿意と格闘しながらフレームレートが頻繁に切り替わる立体映像をガン見し続けるのは、少々しんどかったと認めざるをえない。だが、そうまでしなければこの映像美を得られなかったのも事実である。 Read more

2025/04/30

論評「アドレセンス」:男女論の行く末

正直なところ、このテーマに言及するのはあまり気が進まない。公的に解決を図るのが難しい問題は語りづらい。経済や世代間の格差はまだ辛うじて客観的に分析しうる。分析可能ということは全体の傾向に則って政策を反映させやすく、有力な効果も期待しやすい。 すなわち、お金がない人にお金を配る、雇用がなかった世代のために雇用を創出する。もちろん一言で言えるほど簡単ではないが、どうすれば解決に近づくのか分かっているだけでも話は早い。対して、男女の営みに対する不満はそうはいかない。富や雇用機会は分配できても恋人は分配できないからだ。そういった悩みは当人にしか解決できない。その手の問題を無理に扱った時、大抵は悲劇が起きる。 Read more

2025/04/14

論評「漁村の片隅で」:特権性の自覚

誰しも己の特権性を自覚するのは辛いものだ。自分の成功はまるきり自分ひとりの手柄だと信じ込みたいし、逆に自分の失敗は不運や周囲の環境、ひいては社会や国家に帰責したくなる。たぶん、いくらかは双方ともに事実なのだろう。卓越した成功は相応に自己研鑽ゆえであり、愚かな失敗は相応に不運や環境が招いている。現代社会の成り立ちは複雑怪奇でどんな成功や失敗も一人では抱えきれない。 しかし、あまりにも奇跡的な実例を目の当たりするとそういう中庸っぽい考え方がただの御為ごかしにしか感じられなくなってしまう。「みんな辛いのは同じなんだ」と先進国の中心で熱唱すれば肩を組んで一致団結できるかと思いきや、世界の片隅に属する人々の辛さは明らかに同等ではない。我々が空気を吸うかのごとく得ている物事が、彼ら彼女らにとっては宝石に値するほど得難い贅沢品なのだ。本作の物語はそれをまざまざと体現している。 Read more

2025/01/30

論評「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」:僕はガンダムもエヴァも嫌いだ

あらかじめ言っておくが僕はガンダムもエヴァも嫌いだ。まず、ミリタリーなんだかオカルトなんだか結局よく分からないところが気に入らない。言うまでもなく、ファーストガンダムの革新性は「白衣を着たひげもじゃの科学者だか秘密結社だかが頑張って作った」みたいな解像度に留まっていた”ロボットアニメ”をミリタリー作品の水準に押し上げたことだった。 つまり、”ロボット”――モビルスーツは作中の軍需企業が製造し、資金は政府が拠出している。事前の計画やデータに基づいて設計が行われ、必要に応じて中断や改良、量産化もありえる。殊に量産化の概念は本作の”ロボット”が操縦者の相棒でも友達でもなく、純然たる兵器、道具に過ぎない事実を効果的に打ち出している。 Read more

2024/09/11

ターミネーターシリーズの思い出を語る

現在、Netflixで「ターミネーター0」が公開されている。なんとあのターミネーターシリーズの最新作がアニメでやっているのだ。こういう企画が通るのも色々な意味で時代の流れだと感じる。アニメファンが世界中に増えたのも理由の一つには違いないが、より大きいのは本作の不可侵性がもはや失われたことだろう。 ターミネーターシリーズは誰もが知る超有名な映画であると同時に、幾度となく公式で解釈の変更が繰り返された作品でもある。たとえばターミネーター3は2の続編だが、実は主人公の年齢すら食い違っている。さらに言うと、4は3の続編、ドラマ版は2の続編、ジェニシスは1のやり直し、ニュー・フェイトは2の続編のやり直しだ。 Read more

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