2024/06/27

論評「哭悲」:二段構えの地獄

先週の土日はまことにファックネス(ファックの抽象名詞)であった。オフィスで蔓延していた喉風邪の煽りを受けて療養を余儀なくされていたのだ。子どもの頃は居間に布団を敷いてもらって普段は観られない平日のテレビ番組や映画などを楽しんだものだが、なぜか今はそううまくいかない。話がてんで頭に入ってこないのである。 あるいは、もしかすると在りし日の少年陸王は話の内容を捨象して映像の動きだけを追っていたのかもしれな Read more

2024/06/18

論評「ヒトラーのための虐殺会議」:流血なき血なまぐささ

あらすじ 本作はナチス政権下で行われた「ヴァンゼー会議」をもとにした作品である。ベルリン郊外のヴァンゼー湖畔にちなんで名づけられたこの会議では、親衛隊の将校ならびに事務次官などナチスドイツの中枢を支える高官たちが一堂に会している。 戦争のさなか多忙を極める彼らが今回招集された理由は、かねてよりヒトラー総統が掲げる「ユダヤ人問題」の「最終的解決」を討議するためだった。風光明媚な景観を湛える邸宅の中、ラン Read more

2024/01/16

論評「THE CREATOR」:王道と向き合う勇気

はじめに この映画自体が公開されたのは昨年だが、様々な事情の末に僕が本作を視聴したのはDisney+を通じてだった。というのも、本作のあらすじにはどうにもぬぐいがたい不信感が潜んでいたからだ。もったいぶるまでもなく簡単に説明すると、本作は高度に発達した機械(人工知能)と人間が対立を余儀なくされる話である。 うわあ、なんて斬新な世界観なんだろう! 今すぐ映画館に駆け込んで、どんな物語なのか観なくちゃ!…… Read more

2023/05/14

論評「NOPE」:空飛ぶ円盤に今時マジになる

数ある都市伝説やSFの類型でも「空飛ぶ円盤」ほど古典的なものはそうない。いわゆるUFOってやつだ。歴史を遡れば世界大戦にすら登場しているぐらいだから、きっと古事記にも載っているのだろう。ところで僕はUFOと聞くと、なぜかいつもアメリカの田舎の牧場が思い浮かぶ。夜中になるとUFOがふわふわとやってきて、牧場の牛を吸い上げてしまうんだ。おそらくはこれも人生のどこかで挿入されたステレオタイプに違いない。 Read more

2023/01/11

論評「自由への道」:一緒に祈ってくれ

僕の知るかぎり本作はウィル・スミスが授賞式で司会者を殴って以来、初めてスクリーンの前に姿を現した作品だ。あの件への賛否はともかく、ひとまず業界追放は免れたようで安心した。僕は「バッドボーイズ」と「メン・イン・ブラック」に端を発する割と熱心なウィル・スミスファンである。あまり挙がらないが「アイ,ロボット」のスプーナー刑事役もなかなか良い味が出ていた。 「幸せのちから」で息子と共演を果たしてからというも Read more

2023/01/03

パソカタ諸氏へ

なぜ僕の周りではゲーム・オブ・スローンズやウエストワールドが一切話題に上らず全員アニメの話をしているのかということを一生考えてきた。情報系オタク(人生の大半をパソコンカタカタで過ごしてきた人間の、総称)は上の世代も下の世代もアニメばかり見ている。話数が多いと尻込みしてしまうのかとも思ったが、まだ1シーズンしかないイカゲームとかもまるで存在しないかのようだ。よく知られたタイトルでもこんな有様だから、 Read more

2022/12/22

論評「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」:映像革命再び

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」を観た。いつも映画の感想は1ツイート程度で抑えていたが、本作についてはもう少しなにか書けそうな気配があったのでブログ記事に起こすことにした。以降、分野ごとにいくつかの見出しに分けてそれぞれ論じていく。なお、本エントリはネタバレありとなる。各自注意されたし。 CG/VFX まず着目すべき点は映像の美しさである。先日、前作「アバター」を復習した際も13年の年月を疑う映像美に唸ら Read more

2022/11/18

オープニングに神が宿る

それに度肝を抜かれたのは2010年、僕が高校2年生の頃だった。今やあらゆる作品にクレジットされているJ・J・エイブラムスが製作総指揮を務めたドラマ「FRINGE」のオープニングだ。その瞬間まで僕はオープニングというものに気を払った試しがなかった。そもそも作品によっては無かったり、タイトルコールのみで終わることもある。ああ、監督の名前とかが出るあれね、みたいな接し方をしていた。 ところがこのオープニン Read more

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