2022/02/25

地に足のついた祖国防衛議論

西暦2022年2月24日、名実ともに戦争が始まった。タイムラインを更新するたび、色濃く象られる戦争の実像に僕はすっかりあてられてしまった。今まさに、われわれと同じ人間が、別の同じ人間の手によって砲撃され、銃撃され、その肉体をずたずたに引き裂かれているという現実のむごさには耐えがたい恐怖を覚える。 どうやら僕は現代国家の理性をずいぶん高く見積もりすぎていたらしい。確かに、銃弾や爆撃に斃れる人々は今までにも大勢いた。だがそれは国家とは名ばかりのテロリスト集団の仕業であったり、もともと政情不安を抱える紛争地域の話だった。国際秩序の重要な一端を担う常任理事国が、今や隣国を手前勝手な理由で完全に攻め滅ぼさんとしているのだ。 Read more

2021/12/29

中間は存在しない

米国で最近流行りのムーブメントがある。せっかくの年の瀬なので僕はその最新トレンドをちょっくら紹介したい。一般にそれは 「Woke」 と呼ばれている。活動そのものを「Woke」と表すこともあれば、運動に与する人を「Woke」と言うこともある。文字通り、彼らは「目覚めた人」を自称する。一体、なにから?――われわれの社会に潜む隠れた差別的構造からである。 たとえば、ここに白人男性がいるとする。彼は五体満足で、シスジェンダーだ。この瞬間、彼は他者を抑圧していることになる。 なぜなら人種や性的志向の要素においてマジョリティに属しているからだ。Wokeの言い分によれば、マジョリティは生まれながらにしてマイノリティを構造的に抑圧する。これは個々人の行いとは無関係に、ただ息を吸って生きているだけでも変わりない。このようにしてすべての人間の各属性を点検し、マジョリティの抑圧グループと、マイノリティの被抑圧グループに選り分けていく。中間は存在しない。 Read more

2021/10/26

僕はこのように投票した

先日、買い出しのついでに期日前投票を済ませた。僕は根っからの左翼ということもありこれまで投票先にはあまり悩まなかったのだが、今回は予想外の懸念が発生したために投票行動の修正を余儀なくされた。本エントリは投票先の決定に至るまでの経緯について記す。世間では投票を促す文言ばかりが盛んに打ち出される一方、実際に他人がどのような理路でもって投票先を選んでいるか分からないまま迷っている人たちも大勢いると思う。僕の例が参考になれば幸いだ。 Read more

2021/10/01

保守SNSの欺瞞を暴く

一昨日、Misskey.ioのローカルタイムラインはある話題で持ちきりだった。保守SNSを名乗る謎のインスタンスが突如現れたからである。 「保守SNS」とは元東京大学特任准教授の大澤昇平氏によって設立されたSNSだ。名称の通りイデオロギー色が右側に強く、英語圏における「Gab」や「Parler」と同じ立ち位置を狙っているものと見られる。これらの先行例も同様に保守派――というよりは右翼、差別主義者、陰謀論者――が集結する場として知られている。 大澤昇平氏自身にも「自社では中国人は採用しない」との発言を行った結果、特任准教授の地位を追われた過去があり、彼らはその手の発言がしづらくなってきている現代社会を「抑圧的」と捉えているようだ。僕からすれば手当り次第に偏見をばらまく彼らこそ加害者に他ならないが、彼らには彼らなりの主観的現実が備わっており、それに基づくと 「自分たちは”自由”な発言を妨げられ、不当な弾圧を受けている被害者である」 といった具合になるらしい。この認識の隔たりは非常に大きい。 兎にも角にも既存のSNSでうまくやっていけない彼らは、より”自由”な発言の場、自分たちにとっての理想郷を希求するに至った。これがまさしく「Gab」や「Parler」であり、ひょっとすると日本においては「保守SNS」とやらになるのかもしれない。正直このこと自体は大いに結構というか、勝手に視界から遠ざかってくれるのならドシドシやってくれとさえ感じる。とはいえ「保守SNS」が開発されるまでに起こった問題や、ローンチ後の実態については看過できない部分がいくつもあり、その点はきっちり釘を刺しておきたい。 Read more

2021/09/22

自由社会の効能と代償

誰しも我が身はかわいい。人間、自分だけが真実の努力を培っていると言い張り、他者のそれについては過小評価を怠らない。インターネット。日夜、最弱決定トーナメントが開催され、鬨の声が負の方向へと拡散していく。 「親ガチャ」という言葉は実に鮮烈で象徴的だと思う。「格差」などという手垢のついた言葉に比べてこの新語のえぐるような響きはどうだ。単に親の出来で子供の生涯が左右されるといった、今さらあえて論ずるまでもない確定済みの事象のみならず、今日における価値基準の収斂性までもが巧みに示唆されている。 Read more

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