点と接線

魔法少女の従軍記者

この物語は2024年5月に頒布されたフィクション作品であり、実在の人物および団体とは一切関係ありません。その少女は前線基地の会議室に舞い降りてやってきた。いや、舞い降りたという表現はいささか上品にすぎる。今日は作戦指揮に関わる国連軍の将校や事務方の重鎮、民間関係者、そして我々のような記者が一堂に会する最後の場――あけすけに言ってしまえば、これまで丹念に積み上げてきた法的手続きが実る時――つまり、ついに果実として収穫できる日だった。そこへ、いきなり基地の天井を突き破って部屋に飛び込んできたのが彼女だ。当然、記者たちはカメラのシャッターを盛んに切りまくってこれに応じる。戦闘機の爆撃にも耐えうるように設計された最新の3Dプリンター基地を秒で破壊せしめた彼女が一体なにを言うのか、なんでこんな大それた真似をしでかしたのか、会議室の全員が固唾を呑んで見守った。実際、軍人としての彼女の性格は多くが謎に包まれている。〝こんなガラクタの基地で本当に守りを固めているつもり?もっとちゃんとしなさいよ〟〝3Dプリンター工場による大量生産物は自然破壊の大きな要因であり、抗議としてデモンストレーションを――〟〝予行練習のつもりだった。後でもう一回やっていい?〟

たとえ光が見えなくても

 今でも思い出に残っているのは、指先に残るわら半紙の感触。言われるままにピンと立てた人差し指を滑らせると、横にいるお父さんが耳元に語りかけてくれる。「そうら、そこがゲオルゲン通りだ。そこを右に曲がると――」私は言葉を遮って大声で答えた。「レオポルト通りね!おしゃれなお店がいっぱいあるの」「そうだ、いつかお前もそこで立派なドレスを買ってもらえるようになる」耳の奥底からあまりにも聞き慣れすぎた高周波音が徐々に近づいているが、まだ私は喋っている。「でも、私が着たってしょうがないわ。どうせ分からないもの」「そんなことはないよ。立派なお洋服は着るだけで分かるんだ」記憶の中の私はいっそう声を張り上げる。「じゃあ、今、欲しい」「今は……難しいかな。そういうお店はどこも閉まっている」「どうして?」「……みんな、他のことで忙しいんだ。さあ、指がお留守だぞ」私の指先がぐんぐんと先に進み、ルートヴィヒ通りを過ぎる頃には高周波音は耳を覆い尽くさんばかりだった。「ずっとだ、そう、ずっと、さあ、広場に着いたぞ。どこだか分かるかな?」思わず、私は轟音に負けないように大声で叫んでいた。「マリエン広場!私と同じ名前の――」

論評「アドレセンス」:男女論の行く末

正直なところ、このテーマに言及するのはあまり気が進まない。公的に解決を図るのが難しい問題は語りづらい。経済や世代間の格差はまだ辛うじて客観的に分析しうる。分析可能ということは全体の傾向に則って政策を反映させやすく、有力な効果も期待しやすい。すなわち、お金がない人にお金を配る、雇用がなかった世代のために雇用を創出する。もちろん一言で言えるほど簡単ではないが、どうすれば解決に近づくのか分かっているだけでも話は早い。対して、男女の営みに対する不満はそうはいかない。富や雇用機会は分配できても恋人は分配できないからだ。そういった悩みは当人にしか解決できない。その手の問題を無理に扱った時、大抵は悲劇が起きる。

野良ARG(代替現実ゲーム)の魅力

最近、ARG(代替現実ゲーム)の配信動画を観ている。ARGとは現実に存在するなんらかのコンテンツに操作介入を行い、得られた情報をもとに攻略を進めていくゲームのことだ。コンテンツの種類はWebサイトをはじめとして、自宅に送付されてくる財布や日記帳、給与明細など多岐にわたる。中でも僕のお気に入りは『愛宝学園かがみの特殊少年更生施設』 だ。Webページ上で情報を探索して段階的に謎が解き明かされていく仕掛けが物語の没入感を一層高めている。正直なところ、こういった話を一本の小説で読んでもさほど感心しなかったと思われる。この手の筋書きは巷にありふれているからだ。