2021/10/01

保守SNSの欺瞞を暴く

一昨日、Misskey.ioのローカルタイムラインはある話題で持ちきりだった。保守SNSを名乗る謎のインスタンスが突如現れたからである。 「保守SNS」とは元東京大学特任准教授の大澤昇平氏によって設立されたSNSだ。名称の通りイデオロギー色が右側に強く、英語圏における「Gab」や「Parler」と同じ立ち位置を狙っているものと見られる。これらの先行例も同様に保守派――というよりは右翼、差別主義者、陰謀論者――が集結する場として知られている。 大澤昇平氏自身にも「自社では中国人は採用しない」との発言を行った結果、特任准教授の地位を追われた過去があり、彼らはその手の発言がしづらくなってきている現代社会を「抑圧的」と捉えているようだ。僕からすれば手当り次第に偏見をばらまく彼らこそ加害者に他ならないが、彼らには彼らなりの主観的現実が備わっており、それに基づくと 「自分たちは”自由”な発言を妨げられ、不当な弾圧を受けている被害者である」 といった具合になるらしい。この認識の隔たりは非常に大きい。 兎にも角にも既存のSNSでうまくやっていけない彼らは、より”自由”な発言の場、自分たちにとっての理想郷を希求するに至った。これがまさしく「Gab」や「Parler」であり、ひょっとすると日本においては「保守SNS」とやらになるのかもしれない。正直このこと自体は大いに結構というか、勝手に視界から遠ざかってくれるのならドシドシやってくれとさえ感じる。とはいえ「保守SNS」が開発されるまでに起こった問題や、ローンチ後の実態については看過できない部分がいくつもあり、その点はきっちり釘を刺しておきたい。 Read more

2021/09/22

自由社会の効能と代償

誰しも我が身はかわいい。人間、自分だけが真実の努力を培っていると言い張り、他者のそれについては過小評価を怠らない。インターネット。日夜、最弱決定トーナメントが開催され、鬨の声が負の方向へと拡散していく。 「親ガチャ」という言葉は実に鮮烈で象徴的だと思う。「格差」などという手垢のついた言葉に比べてこの新語のえぐるような響きはどうだ。単に親の出来で子供の生涯が左右されるといった、今さらあえて論ずるまでもない確定済みの事象のみならず、今日における価値基準の収斂性までもが巧みに示唆されている。 Read more

2021/09/15

ddc.vimとBuiltin LSPでサブ武器を錬成した

以前はcoc.nvimを用いて開発環境を構築していたが、オールインワン系プラグインならではの過剰性能に思うところがあったのでリプレイスを図ることにした。というのも、CoCが提供する機能のうち僕が絶対に必要としているのはせいぜい下記の3つ程度だったからだ。 ・自動補完 ・LSP ・セレクタ したがって、上記の機能を満たす単機能のプラグインをそれぞれ見繕えば当座の目的は達成できたことになる。僕にとってのVimは小回りの利くサブ武器なので、さしあたり一通りの編集作業がこなせる形に持っていければよいものとした。 ddc.vim ddc.vimは自動補完を行うためのプラグインで、広く人気を集めたdeoplete.vimの後継にあたる。わずか数ヶ月前に公開されたニューフェイスながら既に実用可能なクオリティに達している。ただし仕様上、補完ソースやスニペットの類はすべて分離されているので、各要素の導入と併せてユーザ自らの手で設定しなければらない。 これは作者の言葉通り確かに初心者向けの作りではないものの、かえってそのミニマル志向が僕の使い方には合っていると感じた。さっそく以下から導入および設定例を示していくが、プラグイン管理にdein.vimを用いている都合上、記述内容はそれに則る形をとる。 Read more

2021/09/06

新紙幣の話:ミニマリズムの専横

紙幣のデザインが新しくなる。この件は2年か、3年くらい前には告知されていて、新紙幣の外観も既に公開済みだったように思う。というのも、僕自身そのデザインを見て 「うわダサいなあ」 と強く感じた記憶があるからだ。近頃また新紙幣に関するニュースが報じられて改めて見る機会が増えてきたが、未だ感想は変わらない。僕の感性――ミニマリズム的感性では、どんなに前向きに解釈してもダサく見える。 新紙幣がダサく感じられる原因はおそらく、同じアイコン(肖像)が使い回されていたり、フォントサイズがやたら大きく間延びしていたりと、なにかと情報過多を印象づける要素が多いところにあるのだと考えられる。ネット上でも否定的な声が多い。情報過多の装飾を疎む傾向は、実物と抽象的な記号を容易に関連づけられる能力が人々の間に育まれていった結果と言える。 Read more

2021/08/31

ライムとコロナビールと量子論的ぬか漬け

誠に遅まきながら、森見登美彦著「夜は短し歩けよ乙女」を読んだ。同著者の作品といえば「四畳半神話大系」に触れたきりだったが、折よくKindle Unlimitedの対象作品に含まれていたので手に取った次第である。 ひとまとめに言うと、とにかく酒が飲みたくなる話だった。表題作の章にやたらと酒を飲むシーンが出てくるのだ。続く後の章に酒はろくすっぽ登場しないのに、僕はずっとそのことばかりに気を取られていた。同著者の鬱陶しくも美しい筆致で描かれたそれは、下戸の僕には存在しないはずの器官をいたく刺激せしめた。 Read more

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