2024/07/01

革探しの旅Ⅱ:必要にして十分な携行品

前回の精神的続編。革鞄は買わないと言っていたが、あれは嘘だ。幾度となく原宿の工房に通って選び抜いた一品が先週末、約2ヶ月の歳月を経てついに完成と相成った。この鞄には使う前にして僕のライフスタイルが詰まっている。なぜなら来る日も来る日も、工房のありとあらゆる鞄に携行品を出し入れして検討を重ねてきたからだ。そこには永久の課題が存在する。”僕は一体なにを持ち運べば事足りるのか?” 人によってはこの問いは愚問である。常に巨大なリュックサックを背負い、一切の荷物を受け入れられる大人物に引き算の理屈はない。たとえ中に半年に一度も使わない道具があったとしても、いざという時に役立てばそれで良しと鷹揚に構えられるのならどこにも差し障りはない。 他方、僕は持ち物にややシビアな性格だ。使わないかもしれないものを持つのは重さや大きさにかかわらず我慢ならない。かといって手ぶらで都市という名の戦場に赴くほどの武士(もののふ)ではない。最低限の装備は持っていきたい。プライベートにおいて、季節や状況によらずなにが必要にして十分な携行品なのか――鞄を選ぶにあたり、僕はずっとこのことを考え続けた。 Read more

2024/05/28

本売りまくりⅡ

土曜日 5月27日。コミティアの前日、例によって表参道付近をうろついていたところ――今回は冷やかしではなくちゃんと革鞄を買った――なお出来上がりは7月中旬の予定――合同誌の特装版作りを行うための頭数が足りないと聞きつけ、急きょ東京大学駒場キャンパスへと足を運んだ。指示に従って現場に向かった僕は、気がつくとマジで謎の空間に立っていた。 「槌音広場」とやや物騒な名前が付けられたこの場所、なんとグーグルマップで表示される。見た感じ学生たちが木工の作業場として利用する敷設のようだ。特定の道具に所有権が宣言されていたり、スプレー缶を使っていい位置に指定があったりなど、なにやら規則めいたものも存在する。しかし誰の手によって運営されているかは不明だ。 Read more

2024/05/20

本売りまくり

5月18日の昼下がり。性懲りもなく革小物探しで表参道辺りを徘徊していたところ、今日は自分が寄稿した合同誌が頒布される日だったことに気がついた。そう、かねてより宣伝を繰り返していた戦略級魔法少女合同である。頒布会場はここからなら大して遠くはない。さっそく都営地下鉄に飛び乗り、東京大学本郷キャンパスへと向かった。 この日、東京大学では五月祭なるデカ学園祭が催されていた。同人誌即売会のコミックアカデミーはそれに属する企画の一つだ。総合大学ならではの広大な敷地を惜しみなく活かした屋台の群れ、重低音をふんだんに効かせた特設ステージの大音響などを尻目に最奥の工学部棟まで歩を進める。 Read more

2024/05/12

革探しの旅

ふと、身につけている革製品を新調したくなった。僕がいま使っている革製品はだいたいどれも学生の頃に買い揃えたものだ。つまり10年近くは使っている。革製品の寿命は長い。数十年かそこらでは機能的な支障はまず生じない。 だが当然、学生の頃に買ったのだか品物選びには10年前の僕の美意識が反映されている。昔の僕の見る目がなかったとは言わないが、さすがにそれほどの年月が経てばものの感じ方は変わらざるをえない。20歳と30歳では同じ人物でも中身はほぼ別人だ。 Read more

2024/04/29

束になって浮かれる

思いのほかとんとん拍子に物事が進み、来月から新しい職場で働くことになった。そう、この男、こっそり転職活動をしていたのである。転職先はGoで書かれた非対称鍵暗号基盤を自社製品に持つ受託企業だ。もちろん将来的にGo案件に関わる機会を念頭に置いての話でもあるが、選考の過程でCTOの方と技術選定に纏わる問題意識が一致していたところが大きい。 インフラ寄りのSEからPGに鞍替えする形なので年収はさほど上がらなかったものの、福利厚生は申し分なく晴れてリモートワークの権利も獲得できた。そんなわけでゴールデンウィークを前にあらゆる問題が完全に解決する見通しとなった僕は、浮かれに浮かれきった気分で休暇を迎えた。 Read more

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