2024/09/21

家系へのシフトチェンジ

昔、ラーメン二郎がとても好きだった。徒歩圏内に二郎インスパイアが2つあり、さらに学校から自転車で行きやすい距離には目黒店もある好立地に恵まれていたおかげで、麺もヤサイもニンニクも不足する日はなかった。どうしてトッピングが全部カタカナ表記なんだろうという疑問とは裏腹に、昼も夜も二郎に通い続けた。間違いなく当時、身体を構成する成分のうちの何割かは二郎だったと思う。 大量の油脂と炭水化物とたんぱく質を飲み込むように胃袋に叩き込むと気分が高揚してとてつもない満足感に包まれる。完食にかかる時間は短ければ短いほど望ましい。15分よりも10分、10分よりも5分で食べきれば脳みそから染み出す快感がより一層高まっていく。大学に進学した後も最寄りの二郎系を探したのは言うまでもない。 Read more

2024/08/26

革探しの旅Ⅲ:ジッパーの逆襲

前回の精神的続編。たぶん旧作ファンに怒られる方の。一度決めたコンセプトを覆すのは辛いものだ。ある日、通勤用に愛用していた布鞄が裂けた。ラップトップが入り、他の携行品もぴったり収まる上に可愛い、すばらしい鞄だったのにここへきて弱点が露呈してしまった。誓って言うが直接なにかを当てたり擦ったりはしていない。上の画像は内側の左端だが右端もほぼ同様の有様だ。 もちろん補修はできる。せっかくなら裁ち革を用いた修繕を試そうと思い、すでに革素材を発注している。だが、どんな素材を用いようとも状況からみて応力が端に集中している以上、通勤用途にはもはや耐えられそうにない。今後は予備や雨天時など他の身の置きどころを考えてやる必要がある。 となると新たに鞄を発注しなければならず、材質はおのずと革製が選択される。長期的な耐久性において革を凌ぐ材質はそうない。コストパフォーマンスではナイロンが有利だが、加水分解という時の宿命からは逃れられない。製品サイクルの早さゆえデザイントレンドの影響も受けやすい。一方、革製品はそれ自体がトラディショナルな性質を持つ。きっと月面旅行でも使われるだろう。 Read more

2024/08/18

すごいぞシミュレーションゴルフ

シミュレーションゴルフを契約して半月ほど経った。かつて会社帰りにバッグを背負って自転車を漕ぎ、わざわざ練習場に行っていた面倒を思えば最寄り駅を降りて即座に球が打てるのは凄まじい文明開化ぶりである。それでも僕がこれまで現実の世界にこだわっていたのは、やはりリアルに飛んでいく球しか信用ならず打った気にならないという固定観念ゆえだった。 しかし現実世界はタイパもコスパも悪い。自転車で往復するだけでも何十分もロスしているし、月極で打ち放題の形態をとるシミュレーションゴルフと比べて練習場は行けば行くほど金がかかる。なにより「リアルに飛んでいく球」といっても、所詮は敷地面積次第だ。近場の練習場は150ヤードが限界なのでロングアイアン以上で打つとどのみちほとんど区別が付かない。 Read more

2024/08/14

本売りまくりⅢ

前回の続き。8月12日、コミケ当日。ほぼ始発の電車でサークル主催者、東大生君ことenden――僕はいきなり登場人物の名前を出さず段階を踏むやり方が好きだ――の家に向かったところ、寝耳に水の新事実を知らされた。様々な事情により特装版の仕上げがまだ完成していなかったのである。彼は徹夜で作業を続けていたものの無慈悲にも太陽はみるみるうちに昇り、サークル参加者の入場時刻は刻一刻と近づいている。 オタク学生に特有の本棚とガジェット類と謎のオブジェで満ちたワンルームで、僕も自分ができそうな作業を手伝ったが今さら大して能率は上がらない。気がつけば時刻は7時半を過ぎ、8時に迫りつつあった。本来、サークル参加者は9時半前に受付を済ませなければならず、ここから国際展示場駅まで1時間以上かかることを踏まえると今すぐに出なければ間に合わない。 そこで、我々は究極の決断を余儀なくされた。「特装版は作りながら売るしかない」 急ぎ、未完成のモルタルの塊と作業道具、そして通常版の本を台車に積み上げ、切らしたガムテープを買う時間も惜しんで封もせぬまま係留――今になって考えるとマジでありえない限界すぎる行動で駅に跛行した。 Read more

2024/08/05

本作り

8月3日(土)。夏コミに向けての同人誌作りが始まった。当ブログでもかねてより宣伝している戦略級魔法少女合同の特装版を作り、元の2倍の価格で売りつけようというのだ。この計画は本来すでに実現しているはずだったが、様々な困難により今回まで持ち越しになっていた。サークルの学生諸君らが夏休みに入った今、急ピッチで制作が進められている。 当日、サークル主催者の東大生君(仮名)と参加者の藝大生君(仮名2)と私文中退(僕)が全員1時間以上遅れて東大駒場キャンパスに集結すると、どこからか謎の電動工具や様々な作りかけの部品、その他道具などが続々とまろび出てきて準備が整った。東大生君が室内で他の作業をしている間、藝大生君と僕は前回も紹介した槌音広場で板を切る仕事に従事する。 といっても、2ヶ月前から大きく変わった作業工程について僕はろくすっぽ理解していなかった。なにしろ特装版の最新仕様を把握しているのは先の2人だけなのだ。僕の仕事は小説が本の中に収まった時点で完全に終わっているし、外装の良し悪しを決める自信はない。ただ、異常な装丁が現に莫大な売上をもたらした事実と、異常な若者がなにか熱心にやろうとしているロマンに期待を寄せて黙々と小間使いに徹した。 Read more

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