2024/07/01
革探しの旅Ⅱ:必要にして十分な携行品
前回の精神的続編。革鞄は買わないと言っていたが、あれは嘘だ。幾度となく原宿の工房に通って選び抜いた一品が先週末、約2ヶ月の歳月を経てついに完成と相成った。この鞄には使う前にして僕のライフスタイルが詰まっている。なぜなら来る日も来る日も、工房のありとあらゆる鞄に携行品を出し入れして検討を重ねてきたからだ。そこには永久の課題が存在する。”僕は一体なにを持ち運べば事足りるのか?”
人によってはこの問いは愚問である。常に巨大なリュックサックを背負い、一切の荷物を受け入れられる大人物に引き算の理屈はない。たとえ中に半年に一度も使わない道具があったとしても、いざという時に役立てばそれで良しと鷹揚に構えられるのならどこにも差し障りはない。
他方、僕は持ち物にややシビアな性格だ。使わないかもしれないものを持つのは重さや大きさにかかわらず我慢ならない。かといって手ぶらで都市という名の戦場に赴くほどの武士(もののふ)ではない。最低限の装備は持っていきたい。プライベートにおいて、季節や状況によらずなにが必要にして十分な携行品なのか――鞄を選ぶにあたり、僕はずっとこのことを考え続けた。
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