2024/09/21

家系へのシフトチェンジ

昔、ラーメン二郎がとても好きだった。徒歩圏内に二郎インスパイアが2つあり、さらに学校から自転車で行きやすい距離には目黒店もある好立地に恵まれていたおかげで、麺もヤサイもニンニクも不足する日はなかった。どうしてトッピングが全部カタカナ表記なんだろうという疑問とは裏腹に、昼も夜も二郎に通い続けた。間違いなく当時、身体を構成する成分のうちの何割かは二郎だったと思う。 大量の油脂と炭水化物とたんぱく質を飲み込むように胃袋に叩き込むと気分が高揚してとてつもない満足感に包まれる。完食にかかる時間は短ければ短いほど望ましい。15分よりも10分、10分よりも5分で食べきれば脳みそから染み出す快感がより一層高まっていく。大学に進学した後も最寄りの二郎系を探したのは言うまでもない。 Read more

2024/04/08

攻めの間食

それにしても腹が減る。僕は毎日ご飯のことを考えて生きている。朝ご飯を食べながら昼ご飯に食べるものを考え、昼ご飯の時は晩ご飯のことを考える。時計の長針が一周するたび、胃袋が蠕動してしきりに集中をかき乱す。一体、なんでこんなに腹が減るのだろう。 待ちに待った食事時。地下牢から脱獄した直後かと見紛う切迫感を抱えつつも、なるべく時間をかけて食べようとする。よく噛むのはもちろん健康のためでもあるが、そうしないとすぐに腹が減ってしまうからだ。なによりせっかくの食事をあっという間に済ませてしまうのは惜しい。 Read more

2024/03/10

主食を栄養源にする

過去記事を読み返すと3年前にこういう記事を書いていた。あれから僕の食生活はさらに改善が進み、ついに食卓から白米を放逐せしめるまでに至った。白米を――放逐する――日本の食生活に慣れ親しんだ人間がそんな大それたことを言い出すと、いかにも鼻持ちならない健康志向のロハスだが、僕にとって問題なのは単純な健康の良し悪しではない。 たとえば僕は二郎が好きだ。あの、ラーメン二郎である。グルテンフリーのロハスどもが全員裸足で逃げ出して、ひと汗かいて家に帰るようなおぞましいジャンクフードだ。曲がりなりにも健康に気を遣う人間が口にすべき食べ物では決してない。ところが、僕はこれを月に最低2回は食べている。他にも揚げ物だって食べているし、手間暇をかけて身体に悪そうなメニューも色々と作っている。 だが僕はそれ以外ではロハスどもと肩を組んで仲良く並走している。毎日食べる弁当は脂身の少ないタンパク質と歯ごたえのある根菜が中心で、わざわざ作り置きしている。毎日、カロリーと栄養素を勘案してあすけんの女にまずまずの得点をもらっている。一日の終わりには輸入もののマルチビタミン剤も飲んでいる。 Read more

2023/07/31

あらゆる状況が僕にコーヒー豆を煎れと告げていた

中年男性がハマりがちな趣味というものがいくつか存在する。蕎麦、チャーハン、パスタ、カレー……そしてコーヒー。多分に漏れず、僕も30歳に相成る過程でそれらすべてにしっかりハマってきた。だが、コーヒーだけは最後の一線に踏みとどまってこらえていた。なぜなら、生豆とさして変わらない価格で最高の焙煎を行う店があったからである。 横砂園と名乗るその店は、コモディティの手頃な品種からスペシャルティの高級銘柄まで幅広く網羅していながら焙煎度合いも選べて、注文した当日中に発送もしてのける圧巻のホスピタリティとコストパフォーマンスを兼ね備えていた。今思えばありえない話だ。通常、どんなサービスや商品であっても速い、安い、良いのうち同時に二つしか満たせない。 すなわち、安くて良いものは遅く、速くて良いものは高い。さもなければ誰かにしわ寄せがいく。「よほどコーヒーが好きなんだなあ」などと能天気でいた僕ときたら、まったく救いようがない。実際には、店主ひとりの過酷な労働によって辛うじて成り立っていた商いだったのだ。 Read more

2022/10/26

ブリッカで上等なエセカプチーノを作る

僕はもっぱらコーヒーをハンドドリップで淹れている。言うまでもなく僕にとって最高の抽出法だからだ。フレンチプレスやらサイフォンやらに色々と手を出しても結局はハンドドリップに帰ってきた。これこそが王道の味に違いない。淹れ方はいくつあっても構わないが、王は一人いればいい。ところがそんな王者でも絶対に叶えられない味わいがある。 そいつはカフェラテだとかカプチーノだとかいう気取ったイタリア野郎の顔をしている。やつらは下地にエスプレッソを使う。エスプレッソは圧力をかけて抽出する特別に濃厚なコーヒーゆえ、ハンドドリップでは逆立ちしても同じ濃さにはならない。普通のコーヒーにミルクを注いでも、それはカフェラテではなくカフェオレと呼ばれる。土台となる苦味が足らないからか、カフェオレはどうあがいても中途半端な味わいに留まってしまう。 Read more

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