2025/09/24

自分たちの方(党派)を向いてほしがっている

創作においてはなにを描くかということと同じくらいなにを描かないのかも重要だ。節操なく要素を詰め込んでいくと太い幹として通したい真のテーマ性が損なわれ、あちこちに散らばって生えた枝葉に栄養を奪われ尽くし、いかにも貧相な見てくれの木々が出来上がる。 これは少し角度を変えると商業的な動機でも成り立つ。ある要素を取り入れるとそれに親和的な客層に好印象を持ってもらえるが、同時に他の客層には反感を抱かれる。ならばと広く客層を取り込もうといたずらに要素を散りばめると、かえって誰にとってもやや不快な、いわゆる「ノイズ」まみれの作品に堕してしまう。要素は増やすよりは減らす方が容易い。 Read more

2025/08/22

革探しの旅Ⅶ:クラッチバッグ編

ナンバリングはもう忘れてくれて構わない。夏真っ盛りの今だからこそ着たい服装はやはり半袖のポロシャツである。僕は夏が来るたびに持っていない色のものを新しく買う。微妙に色合いの違うピンクだけで半ダースくらいのバリエーションが箪笥に唸っている。鹿の子よりニットポロの方が好きだ。ポロシャツという出自からしてスポーティな服装がニットだと一気に都会的な雰囲気になる。最近はMOONCASTLEがアツい。大阪のニットブランドで作りがとても良い。 ところが半袖ポロシャツを着ていると悩まされるのが鞄だ。ニットポロがいかにおしゃれであってもポロシャツはポロシャツなので、ワイシャツより大幅にカジュアル寄りになるのは避けられない。なにしろ半袖シャツそれ自体が圧倒的にカジュアルなのだ。イギリスの高貴な紳士にはファッションの構築感を維持するために半袖の服を一切着ない人もいると言う。しかし我々は誠に遺憾ながら高温多湿の日本に住んでいる。真夏に長袖のニットポロなど着ていたら蒸発しかねない。 Read more

2025/04/03

いずれすべてが代行される

入社当日、または数日目にして早くも退職を果たした新卒社員が続々現れていると言う。巷ではこれを若者特有のタイパ思考などと世代論にまとめて扱う傾向が強いが、新卒者の早期退職率は昔から今まで概ね横ばい(約3割)で目立った変化はなく、少なくとも統計上からは各世代の内的な性質に因る特徴は見られない。 あえて想像するなら、かえって雇用形態が曖昧だった昔の方が「あいつはトンだ」「フケた」と濁して突然消える向きがありそうに思える。もっとも手軽なはずのスキマバイトの類にもスマートフォンが必須とされ契約に個人情報が求められる今時と異なり、当時は港町やドヤ街に赴けば住所不定無職の風来坊でも難なく仕事にありつけたと聞く。だとしたら、昔には昔なりの早期退職の姿があってもおかしくはない。 Read more

2025/03/05

二つのルールの狭間で

最近、興味深い話を聞いた。子育ての難しさだ。ある母親いわく、子どもがなにかをこぼしたりして粗相をすると、自分で掃除をするように言いつけているという。といっても、せいぜい床や机を拭く程度で、躾としてはごく妥当に思える。まもなくその子は後始末の作法を身につけた。 ある日、母が料理中にうっかり手を滑らせて床を汚してしまった。ちょうど子どもが近くにいたので「代わりに掃除しておいて」と頼むと、その子は頑として言い張った。「自分のことは自分で――」母親が繰り返し言っていた叱責である。結局、掃除は後で母が行った。 Read more

2025/02/17

実装を義務とする

先週末、これを作っていた。mttという名前のnpmパッケージで、個人的にまとまっていると嬉しいファイル操作をコマンド化したものだ。実装はTypeScriptで行っている。 指定する引数によって機能が変わり、mtt -rで$EDITORを呼び出して行う一括リネーム機能、mtt -cでファイルおよびディレクトリを個別に圧縮する機能、mtt -iで画像ファイルを縮小する機能を備えている。npm instal -g @riq0h/mttでインストールできる。 特にエディタを用いる一括リネーム機能は以前から様々なツール(たとえばmmvは有名だ)で世話になっていたこともあり、この機会に自分の手で実装して処理を把握しておきたいモチベが強かった。今回の開発を通して最低限の勘所を掴めたと感じている。 あまり頻繁にリネームをしない人はピンと来ないかもしれないが、GUIベースで数十ものファイルの命名規則を合わせたり一貫性を持たせるのは意外に大変だ。その都度、前提条件に沿ったルールを作成したりいちいちスクリプトを書くのも面倒くさい。しかしエディタを――とりわけVimを――自由に扱えるなら話は別だ。どんなファイル群でもたちまちケリがつく。 Read more

©2011 辻谷陸王 | Fediverse | Keyoxide | RSS | 小説