2025/07/30

「顧客ファースト」の政治の方が怖い

先の参院選は自民党の敗北、国民民主党・参政党の躍進、立憲民主党を含むリベラル勢力の停滞という結果に終わった。与党の過半数割れはともかく、5議席程度の議席増が見込まれていた立憲民主党が現状維持に甘んじたのは予想外だった。与党と野党第一党が揃って振るわないのはなにか示唆的なものを感じる。 思うに、市井の人々は現状の体制それ自体にかなりの不満を抱いている――リベラル勢力ではない日本維新の会が同じく退潮していることを踏まえると、左右どちらかのイデオロギーが目立って支持されているわけではない。まだ試されていない新しい勢力で、かつ目下の不満を解決してくれそうかどうか、という刷新感が趨勢を決めたのだと考えられる。 Read more

2025/07/18

2025年参議院選挙、僕はこのように投票する

今週末、参議院選挙の投開票が行われる。すでに各メディアが報じているように、与党の過半数維持はかなり厳しい情勢だ。政治信条的な面からも制度設計上の面からも政権交代を期待する立場としては、通常これは歓迎すべき状況である。ところが、今回ばかりはそういうわけにもいかない。 なにしろ石破政権は過去の政権と比べて明らかに穏健的であり、表向きは保守自認ながらも実態的にはほぼリベラルと言っても差し支えない政権運営を行っている。特に安倍政権時代によく見られたナショナリズム賛美や居丈高な態度はすっかり鳴りを潜め、夫婦別姓や同性婚に諸手を挙げて賛同するとまではいかなくとも、前向きに検討しないでもないぐらいの姿勢が感じ取れる。 Read more

2025/03/05

二つのルールの狭間で

最近、興味深い話を聞いた。子育ての難しさだ。ある母親いわく、子どもがなにかをこぼしたりして粗相をすると、自分で掃除をするように言いつけているという。といっても、せいぜい床や机を拭く程度で、躾としてはごく妥当に思える。まもなくその子は後始末の作法を身につけた。 ある日、母が料理中にうっかり手を滑らせて床を汚してしまった。ちょうど子どもが近くにいたので「代わりに掃除しておいて」と頼むと、その子は頑として言い張った。「自分のことは自分で――」母親が繰り返し言っていた叱責である。結局、掃除は後で母が行った。 Read more

2024/04/15

マンション自治会の小政治

ことの始まりは昨年の冬、郵便受けに入っていた一枚の檄文からだった。そこには、ある人物がマンション自治会の次期会長に立候補する旨が記されていた。以前から折に触れて書いているように、僕は埼玉のとある団地に住んでいる。建物は古いとはいえ駅まで徒歩10分、大型スーパーまでは5分足らず、近隣には繁華街もあるなど周辺環境が非常に良く、その割に家賃も安い。 代わりに、マンション自治会への参画が半ば義務付けられている。各階の住民は毎年2人ずつ「代議員」と呼ばれる広義の生贄を選び、自治会に供出しなければならない。代議員の仕事は自治会費の徴収や連絡事項の伝達をはじめとしてかなり多岐にわたる。同じ階に新しい住民が入居した際には案内役を務めることもある。 Read more

2023/05/28

擬制としての個人主義

先日、立てこもり殺人事件が発生した。4名の死者のうち2名は猟銃で射殺されている。めったにない凶悪犯罪だが、猟銃を所持している点から世捨て人の犯行とは考えにくい。安定した社会的身分でなければ所有の許可が下りないからだ。事実、蓋を開けてみると犯人は市議会議長の息子だという。 さて、市議会議員は国政と比べるといささか印象の薄さは否めないとはいえれっきとした政治家である。政治家の息子が巻き起こすスキャンダルには大小あれど、今回の件はこれ以上ない大事件と言える。大方の予想通り、市議会議長は議員辞職を余儀なくされることとなった。はて、おかしい話だ。我々は個人主義の発達した先進社会に生きているのではなかったか? 件の犯人は30代の成熟した大人だ。子供でもなければ成年被後見人(旧禁治産者)でもない。したがって、個人主義的な見地では市議会議長とその息子はそれぞれ独立した人間と見なされなければならない。この二者は互いに責任を負わなくていいはずだ。あるとすれば民法上の扶養義務ぐらいだ。 Read more

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