2025/10/22

本作り2025秋冬

来月下旬にコミックアカデミーおよびコミティアで合同誌を頒布する。当サークルGradierwerkでは初めての試みとなる定期刊行物の発行だ。毎年最低二回の発行を目標にしている。今回のテーマは『都市SF』に決まった。 よく知られているように、都市SFは順当に書くと概ね「企業・格差・不動産」のいずれかのテーマに回収されていく。つまり非常に物語が被りやすい。ということで今回、僕はあえて悪ふざけに徹してラーメンの話を書いた。すべてが自動化された理想郷的な都市でラーメンを食べる子を描いたほんわかストーリーである。ぜひ楽しみにしていただきたい。 さて先週、僕はその定期刊行物の表紙を作るべく、さいたま市から射出されて東京へと降着していた。特殊装丁を施すのは当サークルのアイデンティティゆえ、定期刊行物とはいえなんらかの工作をしないわけにはいかないらしい。幸い、原稿を書く役割を担っているメンバーのうち、僕だけ一足先に校了を済ませていたので身が軽かった。こうして軛から解き放たれし全裸中年男性が山を下り、野を駆け、学生たちの集まりに押しかけてきたのだ。 Read more

2025/10/09

変な柄のローゲージニットを求めて

長らく関東に住んでいても、暖かい服を手元に置いておくと安心するのは北国生まれの習性かもしれない。我が故郷の岩手県盛岡市ではぼちぼち最低気温が10度を下回る。来月の今頃は氷点下近辺まで下がっているだろう。残暑で弛んだ空気が突然手のひらを返したように鋭く尖り、街行く人々をいきおい突き刺しはじめる。そんな辛く厳しい寒風から身を守りし聖衣が、他ならぬニットである。 これはただのニットではない。都会の人間がスタイリッシュに着る薄手のものとは異なる、極太の毛でもったりと編まれたローゲージニットだ。目ざとい人ならニットにゲージ数という単位が設けられていて、20Gとか12Gとか、7Gといった数字が振られているのを知っている。高ければ高いほど目が細かく薄い。10G以上は概ねハイゲージで、それ以下がミドルゲージとされる。ローゲージと呼べるのは4G以下だ。しかし関東の気候で7G以下のニットが必要とされる局面はほとんどない。 Read more

2025/09/24

自分たちの方(党派)を向いてほしがっている

創作においてはなにを描くかということと同じくらいなにを描かないのかも重要だ。節操なく要素を詰め込んでいくと太い幹として通したい真のテーマ性が損なわれ、あちこちに散らばって生えた枝葉に栄養を奪われ尽くし、いかにも貧相な見てくれの木々が出来上がる。 これは少し角度を変えると商業的な動機でも成り立つ。ある要素を取り入れるとそれに親和的な客層に好印象を持ってもらえるが、同時に他の客層には反感を抱かれる。ならばと広く客層を取り込もうといたずらに要素を散りばめると、かえって誰にとってもやや不快な、いわゆる「ノイズ」まみれの作品に堕してしまう。要素は増やすよりは減らす方が容易い。 Read more

2025/09/13

ActivityPub実装には手を出すな!

ここ一ヶ月弱の間、ろくに文章も書かずになにをしていたのかと言えばActivityPub実装を直していた(泣)ActivityPub実装とは、TwitterがXと化した経緯をきっかけに再び注目を浴びたMastodonやMisskeyなどのサーバソフトウェアを指している。この文言を読んだ覚えがない諸君はまずこの記事を読まなければならない。 先月に銀河の彼方へと飛び立った僕の実装は今のところ無事に航行を続けている。唯一の乗員にして船長にして技術者である僕が毎日せっせと船中を動き回って穴を塞いでいるからだ。穴はそこかしこに空いている。もともと見落としていた穴もあるし、外部との接触で空いた穴もある。 乗っている船が穴だらけだと気になって眠れない。ここしばらくは平均5時間も寝ていない気がする。コンピュータに触れない電車の中でも、同人誌即売会で売り子をしている最中も、隙あらばスマホを取り出してSSHクライアント越しにサーバログを見ていた。流れゆく大量の文字列の流星群から重要な情報を見つけるために目grepしすぎて目暮警部になった。目がしばしばしすぎて柴犬になった。ドッグフーディングしているだけに。その声は、我が友、李徴子ではないか? Read more

2025/08/22

革探しの旅Ⅶ:クラッチバッグ編

ナンバリングはもう忘れてくれて構わない。夏真っ盛りの今だからこそ着たい服装はやはり半袖のポロシャツである。僕は夏が来るたびに持っていない色のものを新しく買う。微妙に色合いの違うピンクだけで半ダースくらいのバリエーションが箪笥に唸っている。鹿の子よりニットポロの方が好きだ。ポロシャツという出自からしてスポーティな服装がニットだと一気に都会的な雰囲気になる。最近はMOONCASTLEがアツい。大阪のニットブランドで作りがとても良い。 ところが半袖ポロシャツを着ていると悩まされるのが鞄だ。ニットポロがいかにおしゃれであってもポロシャツはポロシャツなので、ワイシャツより大幅にカジュアル寄りになるのは避けられない。なにしろ半袖シャツそれ自体が圧倒的にカジュアルなのだ。イギリスの高貴な紳士にはファッションの構築感を維持するために半袖の服を一切着ない人もいると言う。しかし我々は誠に遺憾ながら高温多湿の日本に住んでいる。真夏に長袖のニットポロなど着ていたら蒸発しかねない。 Read more

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