点と接線

超カッコいいカメラを借りた

初夏、厳しい陽の光と涼しい風が同居する稀有な季節。特に予定もなく街に繰り出した僕は、同じように予定のない友人を呼び出していた。文芸サークルの献本を受け取っておきたかったのと、前にカメラを借りる約束をしていたのでちょうどよいと思った。果たして彼が到着すると、さっそく持ち出してきた超カッコいいカメラがスタバの狭すぎるテーブルに並べられた。誠に遺憾ながら彼に教えてもらった豆知識はろくに覚えていないが、少なくとも僕が借りたのは右側のレチナⅡaである。今から70年くらい前のフィルムカメラということで、すなわちレトロカメラの部類に属する。

結局、東大生に任せるしかない

5月16日に東京大学の学園祭『五月祭』が開催される。僕は東大生でも東大OBでもないが、文芸サークルの主宰者が東大生であったりなどでなにかと縁が多く、ここ数年はよく足を運んでいる。残念ながら今回は同人誌の出展予定はない。早く万全な体制を整えて定期刊行物をビシバシと出していきたいものである。その五月祭だが今年は少し揉め事が起こった。(本当は毎年いつもなにかで揉めているが)あの排外論者にして陰謀論者、SNSが生み落とした令和の魔物、参政党の神谷某が五月祭で講演するというのだ。講演を依頼したのは東大生の保守サークルとのことで、当然ながら界隈では激しく賛否が沸き起こった。

基本入力インターフェイス

 土や砂の詰まった容器でいっぱいになった背嚢を下ろすと、僕はいつもの場所に腰を落ち着けた。天を衝くほどの高層ビルがそびえていた島も、世界でもっとも栄えていたとされる湾岸の街並みも、等しく時間の圧力に押しつぶされて瓦礫の山と化している。遠目に見える半身の立像――かつて自由を讃えていた――だけがこの辺りで唯一、まともに建っていると言える建物だ。この前に来た時よりも暖かくなっていたおかげか、そこそこ長い距離を往復した割にさほどの疲労感はなかった。乳白色の平らな地面を手でさすりながら、手頃な位置にナイフを突き刺して切り取る。力がないだけにずいぶん手間取るが、暇はたっぷりある。そうして得た塊からこぼれ落ちた破片を口に含む。しょっぱい。しかし、ミネラルと塩分の摂取にはこの上なく都合が良い。なぜならこれは塩そのものだからだ。地平線の彼方まで広がるこの平面はかつて海の一部だった。大昔、未曾有の気象災害により海水が凍結し、固まり、空を覆い尽くした分厚い雲によって封じ込められ、長い長い年月を経て重厚な塩の結晶の層ができあがった。進もうと思えばこのままずっと先まで進んでいける気がする。どこかで塩の層が途切れて水の海に出会えるのかもしれないし、延々と進んだ先に別の島か大陸が顔を出すのかもしれない。仕事として与えられていない以上、そんな長丁場の寄り道は決してできないが、この白く濁った表面は僕を特別な気分にさせてくれる。

夏の装い2026

桜が散り、葉が緑黄に色づくと春は瞬く間に我々の背後へと遠ざかり、今や夏が目前に迫ってきている。すでに夏日が顔を出し、服務規程に縛られたオフィスビルの戦士たちがスーツを甲胄のように着込んでいる傍ら、僕はジャケットをいそいそとクローゼットの後列へと仕舞い込んでいた。じきに麻、リネンの季節である。もし皆さんがリネンの圧倒的な清涼感をまだ体感していないのであれば、直ちに服屋に駆け込んで手に入れるべきだ。日本の酷暑はもはやリネンなしでは生き残れない。実は20年前からユニクロでも売られている。通気性に優れ、軽量速乾のリネン素材は実用性の面からも強くおすすめしたい。日本に住む者は全員リネンを着るべきだ。