2021/06/10

書評「人間たちの話」:にじみでる諦観の念

どんなに完璧な生活リズムで暮らしていても、やはり寝付きが悪い日というのはあるものだ。寝床に入って十分、二十分……まだ眠れない。そんな時には、諦めて本を手にとる。眠れない日の読書はどういうわけか活字がよく頭に入ってくる。夜半に間食を貪るがごとく、僕は文章を頬張った。 そうは言っても膨らむのは頬ではなく瞳孔で、咀嚼音の代わりに目がぱちぱちと閉じて開く。そういう形態の営みを三時間も続けた頃、物語はあらかた Read more

2021/06/04

黒マスクと偏見と自由競争

わずか二年ほど前まで「黒マスクはセンスが悪い」扱いだったことを覚えているだろうか。 疑うのなら期間を指定して適当なワードでググってみるといい。着けているマスクが単に黒いというだけで、あたかも着用者の人格まで決めつけられかねない勢いだ。 時が経ち現在。黒マスクだからどうこうと抜かす輩はほとんどいなくなった。それどころか、もっと奇抜な色合いのマスクを着けている者も今や珍しくない。あれほどこぞって黒マスクを Read more

2021/05/27

完全に正しい時ほどへりくだる

いや、これはただの愚痴みたいなもんなんだけどさ。 いわゆる団地というところに引っ越して半年ほど経つ。色々な制約はあったが、駅まで徒歩十分以下かつ激安の家賃ともなれば多少のことには目をつぶらなければなるまい。今なお社会人学生の夢を捨てきれていない僕にとっては、間違いなく好条件の住処なのだから。なんだかんだでドラム式洗濯機も55インチのブラビアも上手くねじ込めたしな。引越し業者の神テクニックには舌を巻か Read more

2021/05/25

「一文が長い」と言われてもな

ロゴーンっていうWebサービスがある。言わずと知れた文体診断サイトで、ここに自分の文章をぶちこむと項目別にスコアリングしてくれる。項目は四つあり「文章の読みやすさ」、「文章の硬さ」、「文章の表現力」、「文章の個性」がそれぞれ評価される。文体が似ている作家をリストアップしてくれる機能もあるが、そっちはよく判らない。 このうち「文章の読みやすさ」以外は問題にならない。僕は「文章の硬さ」を記事の内容に応じ Read more

2021/05/22

「標準メシ」で差をつけろ

何に差をつけるのかはさておき。 誰しも「特に食いたいものはないが腹は減っている」という状況に身に覚えがあるかと思う。そんな状況下でわれわれ単身者はえてして誤りを犯してしまう。買い置きしたジャンクフードをつまんで後悔し、ならばとコンビニに出向くもあれもこれもと余計に手を出して後悔し、あくる日、通い飽きた店に足を運んで「これじゃなかった」と後悔しながら機械的に箸を運ぶ。 断言してやろう。食いたいものが浮か Read more

2021/05/10

Xiaomi Mi Watchの雑感

筋トレを始めてそろそろ2周年、ランニングはもうじき継続半年になる。後者の方はもともと肥満体型だったこともあり、開始初年度の頃は途中で膝を壊したりして思うように走れなかったが、今年に入ってからようやく肉体の性能が期待に追いついてきたと感じる。 先月下旬、僕はXiaomi Mi Watchというスマートウォッチを入手した。ランニングが板につくとやはり詳細なデータが欲しくなる。なによりGPS搭載のスマートウォッ Read more

2021/04/26

インド土産をもらった

中学以来の友人Yがインドから一時帰国してきた。彼が言うには、インドでの暮し向きは期待ほど愉快なものではなかったらしい。なんでもコロナ禍により移動が厳しく制限され寮からほとんど身動きできず、昭和然とした文化に染まりきった勤務先にも白けてきたという。グローバルに展開しているからといって企業体質が合理的とは限らないようだ。 そういった現地法人の上役たちは、世界に打ってでる典型的な企業戦士として――まさにサ Read more

2021/04/17

書評「アーサー王宮廷のヤンキー」:知識無双系の始祖

前置き 現代の科学技術や知識によって古の蛮習を一掃し、かかる圧政から民草を救おうとする試みはあらゆる物語の上で実践されてきた。どれほどの賢者であっても実際に未来の出来事を把握し、その結果までをも経験した者には及ばない。ゆえに主人公は常に圧勝する。文明を象徴したるわれわれの優れた科学や理性が過去の後塵を拝することなどありえないからだ。 いわゆる知識無双系と呼ばれる作品群は、それらの輝かしい勝利や民からの Read more

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