2021/06/24

光文社古典新訳文庫の軍門に下ることにした

AmazonがKindle Unlimitedの割引セールをやっていたので加入した。この手のセールはあらゆる事象にかこつけて事実上年がら年中行われているが、既に無料お試し期間を消費し終えた僕のようなユーザはたいてい対象外だったりする。幸いにも今回はいつもより適用条件が緩く、割引後価格も3ヶ月間99円とまさに破格だった。 とはいえKindle Unlimitedの国内における評判は芳しくない。「読み放題」を謳うサービス内容からNetflixやAmazon Prime Videoを連想させてしまうせいか、同等の品揃えを期待してタイトル一覧を眺めるとえらく肩透かしを食ってしまう。先の例で大人気ハリウッド超大作が観られることはあっても、Kindle Unlimitedで本屋大賞や芥川賞の受賞作がたちどころに読み放題になることはまずない。アメリカだとまた違うのだろうか? Read more

2021/06/10

書評「人間たちの話」:にじみでる諦観の念

どんなに完璧な生活リズムで暮らしていても、やはり寝付きが悪い日というのはあるものだ。寝床に入って十分、二十分……まだ眠れない。そんな時には、諦めて本を手にとる。眠れない日の読書はどういうわけか活字がよく頭に入ってくる。夜半に間食を貪るがごとく、僕は文章を頬張った。 そうは言っても膨らむのは頬ではなく瞳孔で、咀嚼音の代わりに目がぱちぱちと閉じて開く。そういう形態の営みを三時間も続けた頃、物語はあらかた食べ尽くされた。その時分には、僕の目もようやく咀嚼を止める気になって休息に落ち着いたのだった。特にオチはない。 Read more

2021/06/04

黒マスクと偏見と自由競争

わずか二年ほど前まで「黒マスクはセンスが悪い」扱いだったことを覚えているだろうか。 疑うのなら期間を指定して適当なワードでググってみるといい。着けているマスクが単に黒いというだけで、あたかも着用者の人格まで決めつけられかねない勢いだ。 時が経ち現在。黒マスクだからどうこうと抜かす輩はほとんどいなくなった。それどころか、もっと奇抜な色合いのマスクを着けている者も今や珍しくない。あれほどこぞって黒マスクを揶揄していた彼ら彼女らはいつの間にか溶けて消えてしまったらしい。恥ずかしながら、僕自身も「人の勝手」と前置きしつつも、変わっているなあと思ってはいた。 Read more

2021/05/27

完全に正しい時ほどへりくだる

いや、これはただの愚痴みたいなもんなんだけどさ。 いわゆる団地というところに引っ越して半年ほど経つ。色々な制約はあったが、駅まで徒歩十分以下かつ激安の家賃ともなれば多少のことには目をつぶらなければなるまい。今なお社会人学生の夢を捨てきれていない僕にとっては、間違いなく好条件の住処なのだから。なんだかんだでドラム式洗濯機も55インチのブラビアも上手くねじ込めたしな。引越し業者の神テクニックには舌を巻かずにいられなかった。 Read more

2021/05/25

「一文が長い」と言われてもな

ロゴーンっていうWebサービスがある。言わずと知れた文体診断サイトで、ここに自分の文章をぶちこむと項目別にスコアリングしてくれる。項目は四つあり「文章の読みやすさ」、「文章の硬さ」、「文章の表現力」、「文章の個性」がそれぞれ評価される。文体が似ている作家をリストアップしてくれる機能もあるが、そっちはよく判らない。 このうち「文章の読みやすさ」以外は問題にならない。僕は「文章の硬さ」を記事の内容に応じて意識的にコントロールしている。だから硬すぎるのも柔らかすぎるのも自己演出の一つに入ると思っている。具体的には、記事のポエム力が高くなるほど文体を柔らかくしている。「っていう」とか「じゃないか」みたいな言い回しは無計画に出力されているのではなくて、あえて意図的にしつらえた装飾というわけだ。 こうした表現の違いがページビューに繋がるかはまだ検証できていないが、書き分けを試みるのは単純に面白い。くそ真面目な論文調の記事を読み終わった読者が、気まぐれで別の記事に遷移したらまるで雰囲気の異なる文章に出くわして面食らう、みたいな体験をぜひとも与えてやりたい。 Read more

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