2021/07/19

三日会わざれば誰もが狂人予備軍

時勢柄も影響しているのかもしれないが、ここのところの世間の変速具合には目を見張るものがある。 もし世間が円運動を行っているとしたら、その速度変化にうまく追従できなくなった者から順に振り落とされ、だんだんと壁の隅あたりに溜まっていくことになる。やがてそれらが層をなして縦に横に体積を増していけば、いずれ世間と衝突する。衝突した時、運の悪い構成要素がばらばらの肉塊となって一帯は鮮血で染め上げられる。円運動は止まらない。 Read more

2021/07/07

もぅマヂ無理数。

「このテーマで一本いける」と確信した時は、たいていキャッチーなフレーズが頭に浮かぶ。一通りググってみたが同じ言い回しは見当たらなかった。本エントリでは無理数がマヂ無理になった数である「超越数」 について、自己理解の充足を兼ねた解説を記す。 そもそも無理数とはなにか 実数の世界は有理数と無理数で構成される。有理数にはわれわれが普段から親しんでいる数の大半が含まれる。ざっくばらんに言って、2つの整数を用いて分数で表せる数はすべて有理数、表せない数が無理数となる。 たとえば、整数の1、2、3… はそれぞれ$\frac{1}{1} \frac{2}{1} \frac{3}{1}$…と分数で表せるため有理数となり、0.1、0.2、0.3… のような小数も$\frac{1}{10} \frac{2}{10} \frac{3}{10}$…と変形できることから同様に有理数である。 Read more

2021/06/26

どこからが「政治的」なのか

天皇陛下がオリンピック開催にご懸念を表明あそばされたことで、左右も上下もてんやわんやの大騒ぎになっている。 左派はたいてい共和主義者なので君主の権威には否定的なはずだが、殊ここに至っては「天皇にハシゴを外されてやんの」といった右派に対する報復感情が先行しているのか、意外にも件の表明に首肯する人が少なくない。僕も左派だから気持ちは解らないでもないが、君主の言葉に影響されて政治が動く方こそよっぽど恐ろしい。議会政治はどこへ行った? Read more

2021/06/24

光文社古典新訳文庫の軍門に下ることにした

AmazonがKindle Unlimitedの割引セールをやっていたので加入した。この手のセールはあらゆる事象にかこつけて事実上年がら年中行われているが、既に無料お試し期間を消費し終えた僕のようなユーザはたいてい対象外だったりする。幸いにも今回はいつもより適用条件が緩く、割引後価格も3ヶ月間99円とまさに破格だった。 とはいえKindle Unlimitedの国内における評判は芳しくない。「読み放題」を謳うサービス内容からNetflixやAmazon Prime Videoを連想させてしまうせいか、同等の品揃えを期待してタイトル一覧を眺めるとえらく肩透かしを食ってしまう。先の例で大人気ハリウッド超大作が観られることはあっても、Kindle Unlimitedで本屋大賞や芥川賞の受賞作がたちどころに読み放題になることはまずない。アメリカだとまた違うのだろうか? Read more

2021/06/10

書評「人間たちの話」:にじみでる諦観の念

どんなに完璧な生活リズムで暮らしていても、やはり寝付きが悪い日というのはあるものだ。寝床に入って十分、二十分……まだ眠れない。そんな時には、諦めて本を手にとる。眠れない日の読書はどういうわけか活字がよく頭に入ってくる。夜半に間食を貪るがごとく、僕は文章を頬張った。 そうは言っても膨らむのは頬ではなく瞳孔で、咀嚼音の代わりに目がぱちぱちと閉じて開く。そういう形態の営みを三時間も続けた頃、物語はあらかた食べ尽くされた。その時分には、僕の目もようやく咀嚼を止める気になって休息に落ち着いたのだった。特にオチはない。 Read more

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