2021/01/30
もはや「漠然」とは言えない加齢への恐れ
そいつは年を追うごとに近づいてくる。五年ほど前はまだ遠くで手を振ってくる程度の間柄だったが、この頃は背中にぴったりとくっついてまわるようになった。僕は加齢が恐ろしい。どこからどう見ても僕がおっさんと思われる年齢に達した時、背中にへばりついていたそいつは僕の肉体と一体化して、そいつの持つ諸要素は僕自身のそれと混濁してしまう。そしていくらかの当惑を経た後、今度は何も感じなくなってしまうのだ。
コロナ禍以降、中年男性諸君らの活躍がめざましい。ある者はマスクの着用を拒否したいがために航空機で暴れ、ある者は同様の理由で試験会場にて暴れ、最近では、業務で書いたコードをまったく個人的な動機で公開して開き直るなどという珍事件も起こしている。彼らは決して知能に問題があったわけではない。むしろ大学教員であったり、中年でありながら再受験を志すほど学習意欲が旺盛であったり、技術職に携わる人間であったりした。つまり、知能に自信があってもこれらの事件の当事者のようにならぬ保証はないということだ。
Read more