2021/12/29

中間は存在しない

米国で最近流行りのムーブメントがある。せっかくの年の瀬なので僕はその最新トレンドをちょっくら紹介したい。一般にそれは 「Woke」 と呼ばれている。活動そのものを「Woke」と表すこともあれば、運動に与する人を「Woke」と言うこともある。文字通り、彼らは「目覚めた人」を自称する。一体、なにから?――われわれの社会に潜む隠れた差別的構造からである。 たとえば、ここに白人男性がいるとする。彼は五体満足で、シスジェンダーだ。この瞬間、彼は他者を抑圧していることになる。 なぜなら人種や性的志向の要素においてマジョリティに属しているからだ。Wokeの言い分によれば、マジョリティは生まれながらにしてマイノリティを構造的に抑圧する。これは個々人の行いとは無関係に、ただ息を吸って生きているだけでも変わりない。このようにしてすべての人間の各属性を点検し、マジョリティの抑圧グループと、マイノリティの被抑圧グループに選り分けていく。中間は存在しない。 Read more

2021/10/07

仕事は楽しみですかって聞いてるだけじゃん

日頃Twitterなんぞをやっていると、あまり意識しなくても目に入ってくる話題がある。ここのところは、やれフェミニストがアニメの絵にケチをつけただの、やれ表現の自由戦士がどうのこうの……みたいな論争がけっこう盛んに行われているようだ。いくつかの案件では、僕も自説を2、3ツイート分くらいぶった記憶が残っている。あの手の話題が堂々巡りになってしまうのは、突き詰めると結局は各々の主観に依らざるをえないからだろう。 Read more

2021/09/22

自由社会の効能と代償

誰しも我が身はかわいい。人間、自分だけが真実の努力を培っていると言い張り、他者のそれについては過小評価を怠らない。インターネット。日夜、最弱決定トーナメントが開催され、鬨の声が負の方向へと拡散していく。 「親ガチャ」という言葉は実に鮮烈で象徴的だと思う。「格差」などという手垢のついた言葉に比べてこの新語のえぐるような響きはどうだ。単に親の出来で子供の生涯が左右されるといった、今さらあえて論ずるまでもない確定済みの事象のみならず、今日における価値基準の収斂性までもが巧みに示唆されている。 Read more

2021/09/06

新紙幣の話:ミニマリズムの専横

紙幣のデザインが新しくなる。この件は2年か、3年くらい前には告知されていて、新紙幣の外観も既に公開済みだったように思う。というのも、僕自身そのデザインを見て 「うわダサいなあ」 と強く感じた記憶があるからだ。近頃また新紙幣に関するニュースが報じられて改めて見る機会が増えてきたが、未だ感想は変わらない。僕の感性――ミニマリズム的感性では、どんなに前向きに解釈してもダサく見える。 新紙幣がダサく感じられる原因はおそらく、同じアイコン(肖像)が使い回されていたり、フォントサイズがやたら大きく間延びしていたりと、なにかと情報過多を印象づける要素が多いところにあるのだと考えられる。ネット上でも否定的な声が多い。情報過多の装飾を疎む傾向は、実物と抽象的な記号を容易に関連づけられる能力が人々の間に育まれていった結果と言える。 Read more

2021/08/14

鉄フライパンで塊肉を焼いて食え

「標準メシ」バージョン2.0。改良点はチェダーチーズを上に載せただけだが、はっきり言ってめちゃくちゃうまい。 「標準メシ」朝食エディション。鉄フライパンで焼いた目玉焼きは白身がカリッとしているのに黄身は半熟のままで最高にうまい。加工肉には様々な問題が指摘されているが、それでも菓子パンなんかを食うよりはずっといい。少なくともタンパク源にはなる。 ステーキ。説明不要のうまさ。 前回の続き。メニューそのものに大きな変化はないが調理方法を変えた。都市部の単身者には二口コンロを置ける家に住む金がない。置けても両面焼きグリルが搭載されたコンロなんて買う気にならない。じゃあどうするんだ。単身者はまともな塊肉のソテーなど食えないと申すのか。ずっとレンジでチンの蒸し肉とかで戦うしか術がないのか。そんなことはない。われわれには鉄フライパンがあるじゃないか。 なんでテフロンのフライパンじゃダメなんだ?と思うかもしれない。なぜかっていうとあれは鉄と比べて火の通りが均一じゃないからだ。生姜焼きに使うロース肉くらいまでならこの弱点が露呈することはないが、塊肉とかハンバーグを焼こうとすると途端に支障が出てくる。均一に火が通らないということは、表面だけ焦げて中身は生、とか中心だけ焦げて端っこは生、とか、そういうおぞましい事態が避けられなくなる。 Read more

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