2022/12/13

敗北加速主義

本稿は一般社団法人異常文章排出機構のアドベントカレンダー2022、13日目の記事です。嘘です。 折りに触れて目にするのは、労働者の苦境を表すミームや創作絵である。それらは上司、企業、社会などから理不尽に加えられる仕打ちを軽妙に語り、時として深い悲嘆に暮れる。読者たちはさめざめと日常の辛苦を分かち合う。リプ欄で、引用RTで、空リプで……だが、彼らはその苦しみから逃れる術はないと諦めているのか、権利闘争や転職の話はあまり俎上にのぼらない。 Read more

2022/07/14

竹下通りのダブルバイオーム

原宿の竹下通りには神社がある。竹下通りからどこかに向かって歩いて徒歩十数分、とかではない。まさに街の中心に神社が存在する。 JR原宿駅の竹下口から降りると、すぐ目の前がかの有名な竹下通りである。Kawaiiと雑に総称される文化がそこかしこに輝き、通りの両面にはクレープ屋、キャンディ屋、割と新顔の韓国フードを扱う店などが立ち並ぶ。いつ行っても通りは人間という人間であふれかえり、牛歩のごとき歩みでしか先に進めない。人々の発する嬌声が街の活気を象っている。 Read more

2022/05/01

横倒しのWi-Fiマーク

Wi-Fiマークを横に倒したような印がそこにあればVisaタッチ決済が使えるとは公式の言であるが、伝統的に現金ニコニコ払いが尊ばれる我が国日ノ本においてそのようなOMOMUKIに欠けた小理屈は通用せぬ。ここ日ノ本にてタッチ決済を行うには真心のこもったネゴシエーションが要求されるのだ。それこそが大日本核心価値観の一つであるJOUCHOの表れであり、僕が遭遇しただけでも複数のパターンが存在する。本エントリではそれを簡単に紹介しようと思う。 Read more

2022/04/05

土くれのささやき

料理を作り慣れてくると次第に他の部分にも気が回りだす。僕の場合は料理を載せる器に関心が向いた。動物の食餌と人間の食事に差があるとすれば、ひとえに栄養補給以上の要素をどれだけ見出だせるかにかかっている。ひいてはそうしてかき集められた様々な余剰が文化であり、世界観である。世界観を携えて生きることが僕たちにポリシーや信念をもたらす。 僕の食器に対する最初の接触は、ごく単純な嗜好の反映から始まった。すなわち好きな色をそのまま器に当てはめたのだ。ライトピンクが好きだからライトピンクの器、オレンジが好きだからオレンジの器。そうすると、食卓がにわかに派手になった。様々なアクセントカラーにあふれた食事の風景にしばらくは満足できた。 Read more

2021/08/24

希死念慮スパークリング

例年、夏休み明けは学生の自殺が増えるそうだ。この頃はコロナ禍のせいでただでさえ認知件数が上昇傾向にあるというし、行動を制限された人々が鬱屈した感情を抱え込んでしまうことは想像に難くない。 そんなニュースをトピックに掲げた5ちゃんねるのスレッドを閲覧していると、不意にグロテスクな情報が目に飛び込んできた。昨年の話だが、あるゲーム配信者が生配信中に首吊り自殺を遂げたという。問題の箇所を切り抜き録画したと思しき二分ちょっとのクリップには、一人の人間が自らの命を絶つまでの一部始終が収められていた。 Read more

2021/06/04

黒マスクと偏見と自由競争

わずか二年ほど前まで「黒マスクはセンスが悪い」扱いだったことを覚えているだろうか。 疑うのなら期間を指定して適当なワードでググってみるといい。着けているマスクが単に黒いというだけで、あたかも着用者の人格まで決めつけられかねない勢いだ。 時が経ち現在。黒マスクだからどうこうと抜かす輩はほとんどいなくなった。それどころか、もっと奇抜な色合いのマスクを着けている者も今や珍しくない。あれほどこぞって黒マスクを揶揄していた彼ら彼女らはいつの間にか溶けて消えてしまったらしい。恥ずかしながら、僕自身も「人の勝手」と前置きしつつも、変わっているなあと思ってはいた。 Read more

2021/05/27

完全に正しい時ほどへりくだる

いや、これはただの愚痴みたいなもんなんだけどさ。 いわゆる団地というところに引っ越して半年ほど経つ。色々な制約はあったが、駅まで徒歩十分以下かつ激安の家賃ともなれば多少のことには目をつぶらなければなるまい。今なお社会人学生の夢を捨てきれていない僕にとっては、間違いなく好条件の住処なのだから。なんだかんだでドラム式洗濯機も55インチのブラビアも上手くねじ込めたしな。引越し業者の神テクニックには舌を巻かずにいられなかった。 Read more

2021/05/25

「一文が長い」と言われてもな

ロゴーンっていうWebサービスがある。言わずと知れた文体診断サイトで、ここに自分の文章をぶちこむと項目別にスコアリングしてくれる。項目は四つあり「文章の読みやすさ」、「文章の硬さ」、「文章の表現力」、「文章の個性」がそれぞれ評価される。文体が似ている作家をリストアップしてくれる機能もあるが、そっちはよく判らない。 このうち「文章の読みやすさ」以外は問題にならない。僕は「文章の硬さ」を記事の内容に応じて意識的にコントロールしている。だから硬すぎるのも柔らかすぎるのも自己演出の一つに入ると思っている。具体的には、記事のポエム力が高くなるほど文体を柔らかくしている。「っていう」とか「じゃないか」みたいな言い回しは無計画に出力されているのではなくて、あえて意図的にしつらえた装飾というわけだ。 こうした表現の違いがページビューに繋がるかはまだ検証できていないが、書き分けを試みるのは単純に面白い。くそ真面目な論文調の記事を読み終わった読者が、気まぐれで別の記事に遷移したらまるで雰囲気の異なる文章に出くわして面食らう、みたいな体験をぜひとも与えてやりたい。 Read more

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