2022/04/05

土くれのささやき

料理を作り慣れてくると次第に他の部分にも気が回りだす。僕の場合は料理を載せる器に関心が向いた。動物の食餌と人間の食事に差があるとすれば、ひとえに栄養補給以上の要素をどれだけ見出だせるかにかかっている。ひいてはそうしてかき集められた様々な余剰が文化であり、世界観である。世界観を携えて生きることが僕たちにポリシーや信念をもたらす。 僕の食器に対する最初の接触は、ごく単純な嗜好の反映から始まった。すなわち好きな色をそのまま器に当てはめたのだ。ライトピンクが好きだからライトピンクの器、オレンジが好きだからオレンジの器。そうすると、食卓がにわかに派手になった。様々なアクセントカラーにあふれた食事の風景にしばらくは満足できた。 Read more

2022/03/28

レトロで誠実な有線イヤホン アシダ音響「EA-HF1」

とうとう手持ちの無線イヤホンが故障してしまったので、この機会に有線に出戻りすることにした。僕は自宅に据え置きのオーディオ環境があるゆえイヤホンはもともと滅多に使わない。使うのは椅子に座るのも面倒な時か、それこそ外出時くらいだ。となると厄介なのが、無線イヤホンのバッテリー問題である。日常的に使う人ならこまめに充電するのだろうが、僕のような使い方だとその習慣がなかなか根付かない。いざ使おうとするたびに充電切れ寸前だったことは一度や二度ではない。 Read more

2022/03/22

アンチリコメンデーションとしてのラジオ習慣

ラジオ(SONY ICF-506)を買った。今やラジオはインターネットを介しても聴けるし、情報リソースとしてなら他にいくらでも仕入れ先が存在する。にも拘らずあえてラジオを買った理由は、もちろん停電やインターネットの断絶を見越してのこともあるが、それ以上にライフスタイルの反映を兼ねてもいる。 現在、ウェブのそこかしこでせっせとリコメンデーションシステムが働いている。動画を観る時、音楽を聴く時、ググる時、およそなんらかの情報を得ようとすると、そいつらは仕事をはじめる。次に僕らが類似の動作を繰り返した際に、もっと僕らを気持ち良くさせるために。まったくおありがたい話だ。無尽蔵に噴出する情報の湧き水に巻き込まれて溺れる前に、飲むべき水とそうでない水を選り分けてやろうと言うのだ。おかげで僕らはひとたび好みが定まればいつも良い感じに冷えた水を飲める。水に飽きたらジュースやアルコールを選び直しても構わない。 Read more

2022/03/15

NeovimをちょっとLuaLuaさせた

せっかくNeovim専をやっているのにLua製プラグインに手を出さないのはアレかと思い、とりあえず3つほど移行させてみることにした。真のルアラーはおそらくinit.vimもLuaで書いているのだろうし、プラグインマネージャもpackerとかを使っているのだろう。だが、僕としてはそこまで一気やるのは正直面倒くさい。こういうのはやるにしてもじわじわと段階を経て触っていきたいものだ。 lualine.nvim lualine.nvimはlightlineやairlineのLua実装とでも言うべきstatusline系プラグインである。Vimの扱いに習熟していたり、モダンなIDEの仕様に慣れたユーザはデフォルトのstatuslineではとても満足できない。そこで十年近く前からstatuslineの情報量や視認性を手軽に改善する手段としてこの手のプラグインが出回るようになった。先に述べたlightlineやairlineはその中でもとりわけ知名度が高く、ほとんどのVimmerに一度は使われていると言っても過言ではない。 lualineは豊富な機能を持ちながらもLua実装ゆえの高速さを兼ね備えた、いわば期待のニューホープだ。上のリポジトリページに掲載されている起動速度の検証では、もともと重いことで知られるairlineはもちろん、ミニマルを意識して設計されたlightlineをも僅かに上回る結果を叩き出している。もっとも約2msの差が知覚できるとは思えないが、見たところLuaの知識がなくても簡単に導入できそうなので試しにやってみることにした。なお、下記の設定例はすべてdein.vimの利用を前提にしている。 Read more

2022/03/06

自炊力を底上げする調味料選び

われわれ素人が作る家庭料理は大抵の場合、ごく単純なレシピによって成り立っている。プロのように下ごしらえに何日何時間もかけるのは難しい。われわれの料理も時に趣向を帯びることはあれど、基本的には生活に根ざした営為であり、せいぜい焼いたり煮たりするのが関の山なのだ。 となると、ここで一寸考えてほしい話がある。料理の内訳がぼちぼち限られているならば、加える材料を工夫して成果物の出来を底上げできるのではないか? ――ははあ、なるほど……ブロイラーではなく地鶏を買えとか、オージービーフではなく和牛を買えとか、おおかたそんな痴れ言を抜かすつもりなのだろう……あいにくだがそれがしの懐はそこまで暖かくない。むしろ師走の宵より寒い。せいぜい他を当たることだな――ええい、待たれよ、もう一寸待たれよ、 材料といっても食材の方ではない。調味料の話をしている。 Read more

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