2021/03/22

Alacritty+Prezto+Pureで快適なお洒落ターミナル環境

経緯 ターミナル周りのことであれこれと試行錯誤していたのも今は昔。近頃はKDEを入れるついでにKonsoleも追加しておく手癖が身についてしまい、気が付けば最近のターミナル事情にすっかり疎くなっていた。Linuxはもともとターミナル文化が根強かったせいか、今さら新顔が幅を利かせる余地などないとたかをくくっていたのかもしれない。 聞けばAlacrittyというターミナルエミュレータがミニマルで快適だという。なにげにマルチプラットフォーム対応でWindows版もリリースされている。設定はテキストファイルのみで行うので煩雑なメニュー画面に惑わされることもない……なるほど、なかなか良さそうじゃないか。 むろん、欠点もなくはない。Pros/Consで表すと以下の通りになる。 Pros ・Rust製かつGPU支援が実装されているため動作が軽快 ・マルチプラットフォーム対応 ・設定をテキストファイルに記述する形で行う Cons ・環境によってはフルインストールにビルドを要する ・スクロールバーはない ・タブもない ・日本語のインライン入力は現状サポートされていない 0.11.0で対応した。fcitxユーザは「アドオン」→「X Input Method フロントエンド」→「XIMでOn The Spotスタイルを使う」を有効化しておく必要がある。 Read more

2021/03/20

書評「蠅の王」:愚かしさからの学び

前置き 未成熟な少年少女たちが文明から隔絶した環境で奮闘するさまは、それ自体が独特の芳香を放っている。そこには分別の行き届いた大人の理屈を軽々とすっ飛ばす爽快さと背中合わせのもどかしさ、計画に裏打ちされない行きあたりばったりの邪悪さ、脆く壊れやすくもあり、同時に修復されやすくもある刹那的な人間模様……などが、渾然一体となって詰められているのだ。 本作は巻末の訳者あとがきで既に一定の解説が為されており、キリスト教的なモチーフが用いられていることや、ある種の寓話的性質の色濃さについて言及されている。従って、今さら同様の筋からアプローチしても単なる繰り返しにしかならないので、本エントリではもっと地に足の着いた素朴な難癖に重点を置きたいと思う。 Read more

2021/03/06

金持ちの方が麦を食っている

もうじき三十路に達するともなれば、やはり肉体の健康が気がかりになってくる。思えば、数年前にダイエットを始めて十七キロもの減量に成功したのも、肉体に関する同様の懸念からだった。 カロリーを基礎代謝近くまで制限すれば当然、体重は減る。だが、減るのは脂肪だけに留まらない。よっていたずらに筋肉を減らさぬよう筋トレにも励むべし――各種の能書きが異口同音に言っていたのは概ねこんな具合の内容である。 しからば、とばかりにさっそく腕立て伏せをやってみると、おかしなことにただの一回たりとも満足にできない。能書きは、初心者は膝をつくとよい、と優しく付け加えた。ところが、膝をついてもやはり十全にはこなせない。二回もやれば腕が震えてくる。肉体の衰えが実感として襲いかかってきたのはこの時だ。 Read more

2021/02/25

漫画や小説のマルチエンディングは良くない

前置き キャラクター商売というのは因果なものだ。客をコンテンツに食いつかせる重要な要素であると同時に、食いつきが良すぎて引き剥がせなくなってしまうリスクも孕んでいる。 主人公に正ヒロイン候補が複数人いる形式の恋愛モノを想定してもらいたい。こういった作品は、各ヒロインが様々な駆け引きを繰り広げるものの最終的には必ず一人だけが主人公に選ばれて大団円を迎える。(対象年齢が高い作品やWeb小説などでは重婚やハーレムに発展する場合もあるが、本旨に沿わないため例外とする)少なくとも作品世界においてこれは主人公の選択とみなされるが、メタ的な視点に立てば作者の意思に他ならない。では、唯一の正ヒロインは本当に作者の胸先三寸だけで決定しているのか、といえば、必ずしもそうとは言えない。 Read more

2021/02/12

書評「限りなく透明に近いブルー」:全体的に不潔

前置き 本作を最初に手にとったのは高校生くらいの頃だったと思う。当時、ある種の焦燥感から小説を乱読していた僕は母の蔵書――この頃は電子化以前だったため部屋の壁面と押入れが埋まるほど本があった――から適当に抜き出して読むということをやっていた。その日、不運にも僕の手が捕まえた一冊がまさしく本作「限りなく透明に近いブルー」であった。 当時、本作を通じて得られた読書体験はひかえめに言っても最悪に近かった。高校生の僕には無秩序な堕落が延々と続いているようにしか思えず、むろん、登場人物の誰一人にも共感できるところはなく、おまけに後半は一文がやたらと細切れになっているのに段落が少ないせいか読みづらかった。いっそ読むのをやめてしまえばよかったのに、そのうち面白くなるかもしれないとチンタラやっているうちにページの末尾までたどりついてしまった。読了後の感想は「全体的に不潔」の一言に尽きた。 Read more

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