2022/05/12

あらゆるものの口当たりが良すぎるんだ

今はもう過ぎ去りしゴールデンウィークの思い出。さすがに外出がランニングと買い物だけなのはどうかと考えて、ぶらっと散歩をした。道中で見つけた新規開店らしき『メロンパン専門店』にまんまと数枚の硬貨を剥ぎ取られ、帰宅してさっそくホカホカのそれを齧る。積年の記憶から縁遠い柔らかな食感と上品な甘さに僕は思わず顔をしかめた。 メロンパンというのはもっと表皮がゴツゴツとしていて、口腔内の水分をたちどころに収奪せしめる代物ではなかったか? いま食べているこいつはメロンパンとは名ばかりの高級菓子パンだ。生意気にも中にカスタードクリームまで入ってやがる。なんとまあ嫌らしい。それはそれとして味はたいへん美味しかったので2個買ってきたメロンパンはいずれも瞬時に胃袋に収まった。 Read more

2022/04/15

バイオマン

昔から「いつか音楽をやろう」と思っていた。具体的な時期や楽器の種類はてんで決まっていなかったが、いつかやることだけははっきりしていた。しかし気づけば15歳になり高校に入学し、18歳になって大学に入学した。就職は多少手間取ったがやはり気づけばしていた。なんなら転職も何回かした。その間、色々とやりたいことをやって、やりたくないこともやって、それでもなお時間はなくもなかった。そうした可処分時間の切れ端は気づけば溶けて消えていた。 Read more

2022/03/22

アンチリコメンデーションとしてのラジオ習慣

ラジオ(SONY ICF-506)を買った。今やラジオはインターネットを介しても聴けるし、情報リソースとしてなら他にいくらでも仕入れ先が存在する。にも拘らずあえてラジオを買った理由は、もちろん停電やインターネットの断絶を見越してのこともあるが、それ以上にライフスタイルの反映を兼ねてもいる。 現在、ウェブのそこかしこでせっせとリコメンデーションシステムが働いている。動画を観る時、音楽を聴く時、ググる時、およそなんらかの情報を得ようとすると、そいつらは仕事をはじめる。次に僕らが類似の動作を繰り返した際に、もっと僕らを気持ち良くさせるために。まったくおありがたい話だ。無尽蔵に噴出する情報の湧き水に巻き込まれて溺れる前に、飲むべき水とそうでない水を選り分けてやろうと言うのだ。おかげで僕らはひとたび好みが定まればいつも良い感じに冷えた水を飲める。水に飽きたらジュースやアルコールを選び直しても構わない。 Read more

2022/02/09

ビーカーをコーヒーで満たしたい

そのガラス製品が特有の悲鳴を轟かせた直後、僕は後悔の念をまた一つ積み上げる。ああ、やってしまった。 兎角、僕はガラス製品と相性が悪い。人生の道中で割ったガラス製品は数知れない。なにも大切にする気持ちがないわけじゃない。むしろかなりていねいに扱っているつもりだ。にも拘らず、ふとした拍子に手元が狂ってしまう。3000円近いのウォーターグラスを買って1週間足らずで割ってしまった時には、いよいよ自分はガラス製品にふさわしくない人間なのではないかと真剣に悩んだほどだ。 Read more

2022/01/19

2009年を振り返る

インターネット異常個体証明証。 pic.twitter.com/CpH6chbCUn — @[email protected] (@riq0h) January 12, 2022 つい昨年の出来事を顧みられるほど濃厚な人生は送っていない。僕が振り返るのは夢と希望に満ちあふれ、Microsoftを無駄に敵視していた13年前のあの頃だ。 2009年1月。 Twitterアカウントを開設した理由は、当時遊んでいたPCゲームのフレンドに誘われたからだった。その頃のやりとりを再現すると大方こんな具合になる。 「Twitterって知ってるか」 IRCの雑談チャンネルで出し抜けに言ったのは僕より2歳年上の先輩フレンドだ。小生意気な中学3年生をやっていた僕はIRCクライアントの入力欄ではなく、Google検索のツールバーにせこせことキーワードを打ち込んだ。ほどなくして『Twitter』なる奇っ怪な発音をする代物の概要を突き止めると、さも知ったふうな体でようやく返答を書いた。 Read more

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