2024/02/10

Blueskyの眺め方 初版

■改訂履歴 2024/03/20 ハッシュタグと日本語話者フィードに関する記述を修正 はじめに 本稿は分散型SNS「Bluesky」の基礎的な理解を促す目的で記された文章である。主に登録開放以降に初めて参加した新規ユーザを対象にしている。この文章を通じてXと似ているようで違うBlueskyの輪郭が朧げにでも伝わると幸いだ。 Blueskyの現状 2024年2月現在、Blueskyは競合SNSと比べて明らかに機能性に乏しく、中には運営陣の方針から将来にわたって実装される見込みが低いものも存在する。まずはそれぞれの違いを下表にて示した。なお、独自機能を持つフォークの実装系は本稿では考慮しない。 Read more

2023/12/31

地面と対話するためのインターフェイス

ランニングを始めた頃、僕が最初に買ったシューズはアシックスのJOLT2だった。見た目は少々無骨だが頑丈で、文字通り駆け出しのランナーを保護するための機構が盛り込まれたプロダクトだ。その上、非常に安い。Amazonだと4000円台で手に入る。僕は今でもランニングを始める人には自信を持ってJOLTを勧める。現行のJOLT4はきっとさらに改良が進んでいるのだろう。 履いた時の感触はいかにもがっちりしている。踏み込むと、やや固い。地面の固さが伝わっているのではない。ソールが一枚岩を象って地面の凹凸を吸収している。それゆえ走り方や路面状況に脚部が侵される心配はほとんどない。なにかと故障の絶えない初期のランニングにおいて極めて重要な要素を満たしている。 しかし、走り出して数ヶ月も経つと他の選択肢が欲しくなってくる。念に念を入れて厚着した服をだんだんと脱ぎたくなるように、一度解放されてみたいという気持ちが強まってきたのだ。順調に習慣化が進んだセルフご褒美の側面もある。そこで、次に選んだのがアディダスのPureboostとAdizero RCだ。 Read more

2023/12/17

巨大質量に引きずられて

Fediverseは静かな星系である。Xという名の、自分自身をも燃やしながら光より速く自転している惑星の騒々しさと比べたら、ここいらの星々はまるで止まっているように見える。長い時間をかけてようやく最初の公転を終える惑星もあれば、自転すらままならず雲散霧消してしまう惑星もそう珍しくはない。 なにしろ中心がないものだからそもそも公転の定義からして怪しい。我々は一体なにを頼りに回っているのか、どこへ行こうとしているのかさえ定かではない。かといって別に迷っているわけでもなく、むしろ確固たる意志で漂っている。時折訪れる旅行者はこの辺境特有の奇妙な生態に関心を寄せてくれるが、特になにもないと判ると足早に去っていく。ここには離脱を妨げる高重力もない。 そんなFediverseもたまに惑星同士がうまい具合に隣接する時がある。その瞬間、いつか届けば儲けものと放っておいた電波が結びつき、一時の交流を楽しむことができる。さらに調子が良ければ三連星や四連星を構成する場合もありえるだろう。だが、互いに気まぐれな軌道を描いているゆえ、いつまでも引かれ合っているとは限らない。 ある日。そこへ、巨大質量を備えた惑星が超速度を伴って星系に飛び込んできた。Threadsだ。そのあまりの重力の強さに周囲の惑星は軒並み引きずられ、あたかもビー玉のごとく傾斜のついた宇宙のフローリングを転がっていく。にわかに加速度をもたらされた彼らは次々とThreadsの後を追いかける。 そうして重力圏に捉えられたいくつかの惑星たちは、いつしかThreadsを中心に周回しはじめる。気の向くままだった軌道は強大な引力に律されて、厳密な公転周期を与えられた。おのずと、それらの惑星たちは常に隣接しあい、連星を前提とした大文化圏が誕生する。とりとめのない漂流の道すがらに出くわした他の惑星も、ひとたび彼らの重力に引かれれば二度と自分の軌道には戻ってこられない。 数年後、この辺りはすっかり賑やかになった。今や数億人の住民が共に暮らす大都会星系と化したここには旅行者がひっきりなしに訪れる。インフルエンサーもいるし、報道機関も、大企業も、自治体の出張所もある。幾千の惑星で器用にフラフープをしながらThreadsが言う。「ようこそFediverseへ!」 Read more

2023/11/19

血流で駆動している

まだ「彼」との対話を会得していなかった若かりし頃、僕はモチベーションのばらつきに悩んでいた。書くべき時に、書けない。やるべき時に、できない。ともすると急速に倦怠感が襲いかかってきて頭が働かない。結果、せっかく用意した時間が虚空に溶けていく。 確かに、最終的にはなんとかなる。果てしない再抽選の末に掴んだモチベの高まりを掴みとって、一気に進捗をひねり出す。しかし、こんな行き当たりばったりなやり方を繰り返していると、一体なにに自分が駆動されているのかいよいよ解らない。もちろん人が文をしたためるのは肥大化した脳みその為せる技に他ならないのだが、その脳自体がたいがい気まぐれな代物である。調子が悪いと壊れた霧吹りよりなにも出てこない。 Read more

2023/10/16

戦略級魔法少女ってなんだ!?

近頃「戦略級魔法少女」という概念が巷で広まっているらしい。いかにも文脈の山の上に成り立っていそうなこの概念を理解するには、下部構造を支える魔法少女の系譜を抑える必要がある。まず、原型に子供向けアニメの魔法少女がいて、困っている人々を助けたり騒動に巻き込まれたりする。「魔法を使う少女」にまで定義を広げると羊皮紙と筆ペンの時代まで遡らなければならないので、さしあたり浅瀬から始める。 して、この魔法少女、冒頭は人助けや生活の用を足す役割に甘んじていたが、やがて悪との抜き差しならぬ対決を迫られる。または、自分自身が悪と誤解される事態に巻き込まれて、いずれにしても魔法の物騒な一面に気づかされる。しかしこれは「魔女」や「まじない」の原典というか、現実の歴史からすると真逆のアプローチに近い。 Read more

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