2023/11/19

血流で駆動している

まだ「彼」との対話を会得していなかった若かりし頃、僕はモチベーションのばらつきに悩んでいた。書くべき時に、書けない。やるべき時に、できない。ともすると急速に倦怠感が襲いかかってきて頭が働かない。結果、せっかく用意した時間が虚空に溶けていく。 確かに、最終的にはなんとかなる。果てしない再抽選の末に掴んだモチベの高まりを掴みとって、一気に進捗をひねり出す。しかし、こんな行き当たりばったりなやり方を繰り返していると、一体なにに自分が駆動されているのかいよいよ解らない。もちろん人が文をしたためるのは肥大化した脳みその為せる技に他ならないのだが、その脳自体がたいがい気まぐれな代物である。調子が悪いと壊れた霧吹りよりなにも出てこない。 Read more

2023/11/12

あるはずのバックアップが全部消えていた

自分だけは、と思っていても起きる時は起きる。いつまでもあると思うな親と金とバックアップ。Cloudflare R2にcronで毎日アップロードしていたMastodonインスタンスのデータベースが、いつの間にか全部消えていた。AP実装においてデータベースはすべてである。これをなくしたらもはや取り返しはつかない。 だからこそインスタンスの運営者はデータベースの保全に気を配る。わざわざオブジェクトストレージにアップロードしているのもサーバ本体の破損にデータベースが巻き込まれるのを防ぐためで、ローカルよりもクラウド上の方が安全との判断からだ。にも拘らず、ちょっとした行き違いが重なると瞬時に死の刃が首元まで迫ってくる。かつて僕が書いた自動化スクリプトの例を以下に記す。 Read more

2023/11/05

とりあえずnone-ls.nvimでよくないか? / null-ls.nvimの保守的代替

夏真っ盛りのある日、Neovimの超有名プラグインが爆発四散した。null-ls.nvimはLSPの規格に合わないLinterやFormatterを言語サーバのように動作させられる画期的なクライアントだった。ほぼコピペの設定で完結する簡便さは同プラグインを事実上のデファクトスタンダードの座に押し上げた。 しかし、そんな圧倒的権勢を誇るプラグインは驚くべきことにたった一人の開発者によって維持されていた。極度の多忙さゆえ彼がギブアップを宣言した瞬間、null-ls.nvimのリポジトリはたちまちアーカイブせしめられ、我々は否が応にでも事態を悟らざるをえなくなった。貢献に相応しい報酬を受け取れないのは誠に遺憾ながらOSS開発の宿痾である。 さて、こうして一つの偉大な仕事が終焉を迎えた。Neovim本体のアップデートや環境の変化次第でnull-ls.nvimは早晩動かなくなるだろう。ユーザたちは移行作業に取り掛かりはじめた。僕の周りでは競合プラグインのefm-langserverに乗り換える者が多い。あるいは、まったく別の新しいプラグインを試す者もいた。 Read more

2023/10/29

自動車環境改善Ⅰ

見ての通り、変速機のシフトケーブルが破断した。元々が中古の貰い物ゆえこのような事態に陥ることは早晩目に見えていた。さっそく修理に取り掛かる。当初は変速機ごと取り替える予定でいたが、装着の都合上グリップも変えなければいけない手間から今回は見送った。 修理にはワイヤーカッターなる工具を使う。聞けば、ニッパーでは潰れがちな切断面を美しく仕上げてくれるすごいやつだという。まだ使いもしないうちから意味もなく部屋で開け締めをして謎の充実感を味わう。この感覚は新しい工具でしか得られない独特なものだ。同時に届いた交換用のアウターケーブルとインナーケーブルを外に持って行く。 変速機から伸びているケーブルにはアウターとインナーがあり、車体からはみ出る箇所がアウターケーブルによって防護される形になっている。特に変速機から車体に向かって垂れ下がる部分はハンドルの切り返しで頻繁に湾曲するため、こういった措置を施さなければすぐに摩耗してしまうらしい。恥ずかしながら僕は元からそういう一体型のケーブルなのかと思っていた。 Read more

2023/10/22

思い入れが深すぎる音楽

選りすぐりのお気に入りばかりを集めた一軍プレイリストに入っているのに、なぜか聴く機会が少ない曲がある。思い入れが深すぎて逆に簡単には聴けないのだ。僕にとっては、TRFがそうだ。僕が生まれた年にデビューを果たして、浮き沈みを繰り返しつつも今日に至るまで現存している。まさにJ-POP界の生ける伝説と言っても過言ではない。 TRFと出会ったのは6歳か、7歳か、それくらいの頃だったと思う。当時、観ていた映画か、テレビ番組か、なにに影響を受けたのか定かではないが、僕は唐突に「音楽を聴く機械が欲しい!」とママにねだった。対するママは一桁年齢の子どもに新品のオーディオ製品を買い与えることを躊躇した。そこで手渡されたのが、初代ウォークマン「TPS-L2」だった。昔からちまちまと使い続けていたというそれは、前世紀末の時点ですでにぼろぼろに薄汚れていた。 Read more

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