2023/07/15

30歳の節目に電子の家を建てた

かつての時代では30歳で家を建てることが国民共通の目標だったらしい。1993年、バブル経済の崩壊とともに日本は凋落の道を転がりだし、国政では55年体制が終わり細川内閣が発足、IT分野ではWindows3.1日本語版が発売された激動の年。僕は岩手県とかいう人間より牛の数が多いスカスカの大地にオギャーと誕生した。多分に漏れず、家は新築だった。 時に、西暦2023年7月11日。僕は30歳の誕生日を迎えて名実ともに中年男性と相成った。世相はずいぶん様変わりしたが僕もやはり家を建てた。ただし、肉体の収容を差し置いてインターネット上におけるアイデンティティやコンテンツコントロールの確立を重視した背景から、僕が建てた家は鉄骨でも木でもなく電子情報でできている。 Read more

2023/07/08

尻から10億番目のThreads所感

映画でも漫画でもよくある、主人公を散々苦しめた手強い悪役がさらに強い悪役に瞬殺されるシーン。どういうわけか僕はあれが好きだ。やっとの思いでしのいだ悪役をさらに上回る敵がいるという戦慄、恐怖、のみならず、その敵は同じ悪も容赦なく屠る冷酷さをも持ち合わせている。主人公たちは今後そういう強敵を相手にしなければならない……。 実のところ、我々が目の当たりにしているのはそんな光景なのかもしれない。数々の事業を成功させ大富豪に登りつめたイーロン・マスクは今や、同様に栄華を極めるマーク・ザッカーバーグにひねり潰される寸前だ。SNSに巣食う悪辣な左翼を成敗してくれたと快哉を叫んでいたインターネットのオタクたちもずいぶん口数が減ってしまった。 Read more

2023/07/03

書評「出会って4光年で合体」:生命のダイナミズムと射精

インターネット上に突如現れた本作「出会って4光年で合体」は約400ページもの連なりを持つエロマンガだという。その常軌を逸した頁数もさることながらなおも並々ならぬ異常性を感じさせるのは、各ページに刻まれたおびただしい量の文章だ。作品欄のサンプル画像に気圧されて購入を断念した人も多いだろう。だが、まず言っておかなければならない。あれはまだ序の口だ。 一方、早々に読み切った猛者の間では絶賛の声が相次ぎ、星雲賞受賞待ったなしとの評も囁かれるなか、僕は本作を手に取るまで冷めた態度で騒動を見守っていた。オタクの誇大表現にはいい加減なんらかの法規制が敷かれるべきではないのか、と呆れたところで、いやしかし、400ページのエロマンガなど正気の沙汰では描けぬもの、もしかするともしかするかもしれない。そう考えて、やはり読んでみることにした。読み終わる頃には目がしばしばしすぎて柴犬になった。 Read more

2023/06/26

GNU Social JP管理人 対 僕

「太陽を盗んだ男」という名作邦画がある。異常な理科教師が紆余曲折の末に自室で小型原爆を作って日本政府を脅す話なんだけども、原子力を太陽に例えたタイトルが素晴らしいのはもちろんのこととして企画段階で付けられた仮題も僕はけっこう好きなんだよね。 「日本 対 俺」 っていうんだけどさ。腹から声を出して読み上げるといかにもシュールで面白い。 まあしかし現実はえてして地味なもので日本政府と戦った城戸誠とは及びもつかず、僕が今回挑んだのはGNU Social JPの管理人なわけだ。レスバなんて何年もしていなかったからずいぶん肩が凝ってしまった。本稿を読む人はGNU Social JPの管理人が何者かすでに知っているだろう。一口で言えばFediverse版のまとめサイトのような代物を運営している人物だ。 Read more

2023/06/19

さようなら、いままで絵文字リアクションをありがとう

どうやら僕にとって絵文字リアクションは過ぎた代物でしかなかったらしい。もうすぐそれが通用しない場所に出戻ってしまうけれど、かつて僕の投稿を可愛いアイコンで彩ってくれた人々に感謝の意を表したい。なにしろこれから絵文字リアクションをぶっ叩く持論を展開するので、まずそう言っておかなければならない。 AP実装で初めて絵文字リアクションに触れた場所は言わずもがな、Misskeyの旗艦インスタンスであるmisskey.ioだった。当時、絵文字リアクションがもたらす広範な表現様式に魅了されたのは確かであったし、ioのデータ消失事件をきっかけに移住を余儀なくされた後も「絵文字リアクション対応」は僕の中で常に一定のプライオリティを保っていた。 Read more

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