2021/02/12
書評「限りなく透明に近いブルー」:全体的に不潔
前置き 本作を最初に手にとったのは高校生くらいの頃だったと思う。当時、ある種の焦燥感から小説を乱読していた僕は母の蔵書――この頃は電子化以前だったため部屋の壁面と押入れが埋まるほど本があった――から適当に抜き出して読むということをやっていた。その日、不運にも僕の手が捕まえた一冊がまさしく本作「限りなく透明に近いブルー」であった。
当時、本作を通じて得られた読書体験はひかえめに言っても最悪に近かった。高校生の僕には無秩序な堕落が延々と続いているようにしか思えず、むろん、登場人物の誰一人にも共感できるところはなく、おまけに後半は一文がやたらと細切れになっているのに段落が少ないせいか読みづらかった。いっそ読むのをやめてしまえばよかったのに、そのうち面白くなるかもしれないとチンタラやっているうちにページの末尾までたどりついてしまった。読了後の感想は「全体的に不潔」の一言に尽きた。
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