2020/12/29

二本の短編小説を書いた所感と解説

二本の短編小説を書いた。ワンアイディアのものと、活劇性の高いものをそれぞれ一本ずつ。僕はこれまで短編を書いたことがないわけではないが、基本的には新人賞狙いの長編一辺倒でやってきた。 今思えば長編小説は執筆に時間がかかりすぎて、浮かんだ構想を文章に起こして試すには長丁場すぎるきらいがあったと言える。結果として未完成の原稿ばかりが堆積していき、実際に応募まで進んだ作品はごく少数に留まった。 そこへいくと短編は書きやすい。キャラクターの造形をそこまで深堀りする必要がなく、思いついたテーマをすぐに単一の物語として働かせることができる。短編賞、それもSFの短編賞はほとんどないので実益に結びつきにくいところはやはり欠点になってしまうが、中長期的に見れば決して無駄ではないように感じた。 Read more

2020/12/27

対革命耐性

 被害者は九十二歳の高齢女性。死因は自動車の衝突による全身打撲、および内出血。事故現場は都市低層部の二車線道路沿い。 被害女性は脳内に緊急用身体制御インプラント『フェイルセーフ』を着用していたが事故当時は作動せず、なんらかの理由で身体機能を失調し、歩道から車道にはみ出したものと思われる。 この時、走行中の自動車の運転ソフトウェアは被害女性を完全に検知していたにも関わらず、停止や回避を行わないまま通常速度で正面衝突した。搭乗中のユーザは車内の保護システムにより無傷。 Read more

2020/12/11

主観現実権

 早川はこの日、勤めている会社のオフィスにある一室に呼び出されていた。旧弊な彼の会社は今時でも都内に広いオフィスを構えており、そのうちの大半の部屋は明らかに使用されていなかったが、毎日決められた時間にロボット掃除機が巡回しているおかげでどの部屋も常に清潔さが保たれていた。それは、今しがたドアをノックしたこの部屋も例外ではなかった。 殺風景なその一室には印象の薄い何人かの若手社員がいた。そして無個性なモノトーンの長机とパイプ椅子が、二者を隔てる形で置いてあった。「早川部長、さっそくですが」中でもとびきり若そうに見える男が椅子から立ち上がり、目線と手の動きで着座を促した。彼はごく反射的に言われるまま座ったが、すぐに後悔した。こんな従順な態度を示していたら今からどんなにやりこめられるかわかったものではない。そう悟るやいなや口から声がすばやく飛び出した。 Read more

2020/12/09

事実だけでも印象操作が可能な実例

いま世界中で合衆国大統領選挙に関するフェイクニュースが飛び交っているが、事実だけでも印象操作は十分に可能である。本記事はその実例の一つを示す。 一昨日、あるニュースが発表された。下記はその引用文となる。 日本学術会議会員の男逮捕 下半身触る姿見せた疑い 商業施設内で自分の下半身を触り、その様子を女性店員に見せつけたとして、兵庫県警西宮署が県迷惑防止条例違反の疑いで、豊田理化学研究所フェロー、川村光容疑者(66)=名古屋市名東区=を逮捕していたことが7日、県警への取材で分かった。川村容疑者は日本学術会議の会員。 Read more

2020/12/07

linux-zenの導入について

これまでカスタムカーネルにはほとんど縁がなかった。僕はオーディオ好きなのでリアルタイムカーネルには少しだけ関心を持っていたが、システムの安定性に影響を及ぼしそうなので試用には至っていない。 一方、linux-zen、俗にZENカーネルと呼ばれるカスタムカーネルにはもっと普遍的な付加価値がありそうに思われた。なんせArch LinuxのWikiでは下記のように説明されている。 ZEN Kernel はカーネルハッカーたちの知恵の結晶です。日常的な利用にうってつけの最高の Linux カーネルになります。詳しい情報は https://liquorix.net を見てください (Debian 向けの ZEN ベースのカーネルバイナリ)。 Read more

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