2021/09/22

自由社会の効能と代償

誰しも我が身はかわいい。人間、自分だけが真実の努力を培っていると言い張り、他者のそれについては過小評価を怠らない。インターネット。日夜、最弱決定トーナメントが開催され、鬨の声が負の方向へと拡散していく。 「親ガチャ」という言葉は実に鮮烈で象徴的だと思う。「格差」などという手垢のついた言葉に比べてこの新語のえぐるような響きはどうだ。単に親の出来で子供の生涯が左右されるといった、今さらあえて論ずるまでもない確定済みの事象のみならず、今日における価値基準の収斂性までもが巧みに示唆されている。 Read more

2021/09/06

新紙幣の話:ミニマリズムの専横

紙幣のデザインが新しくなる。この件は2年か、3年くらい前には告知されていて、新紙幣の外観も既に公開済みだったように思う。というのも、僕自身そのデザインを見て 「うわダサいなあ」 と強く感じた記憶があるからだ。近頃また新紙幣に関するニュースが報じられて改めて見る機会が増えてきたが、未だ感想は変わらない。僕の感性――ミニマリズム的感性では、どんなに前向きに解釈してもダサく見える。 新紙幣がダサく感じられる原因はおそらく、同じアイコン(肖像)が使い回されていたり、フォントサイズがやたら大きく間延びしていたりと、なにかと情報過多を印象づける要素が多いところにあるのだと考えられる。ネット上でも否定的な声が多い。情報過多の装飾を疎む傾向は、実物と抽象的な記号を容易に関連づけられる能力が人々の間に育まれていった結果と言える。 Read more

2021/08/14

鉄フライパンで塊肉を焼いて食え

「標準メシ」バージョン2.0。改良点はチェダーチーズを上に載せただけだが、はっきり言ってめちゃくちゃうまい。 「標準メシ」朝食エディション。鉄フライパンで焼いた目玉焼きは白身がカリッとしているのに黄身は半熟のままで最高にうまい。加工肉には様々な問題が指摘されているが、それでも菓子パンなんかを食うよりはずっといい。少なくともタンパク源にはなる。 ステーキ。説明不要のうまさ。 前回の続き。メニューそのものに大きな変化はないが調理方法を変えた。都市部の単身者には二口コンロを置ける家に住む金がない。置けても両面焼きグリルが搭載されたコンロなんて買う気にならない。じゃあどうするんだ。単身者はまともな塊肉のソテーなど食えないと申すのか。ずっとレンジでチンの蒸し肉とかで戦うしか術がないのか。そんなことはない。われわれには鉄フライパンがあるじゃないか。 なんでテフロンのフライパンじゃダメなんだ?と思うかもしれない。なぜかっていうとあれは鉄と比べて火の通りが均一じゃないからだ。生姜焼きに使うロース肉くらいまでならこの弱点が露呈することはないが、塊肉とかハンバーグを焼こうとすると途端に支障が出てくる。均一に火が通らないということは、表面だけ焦げて中身は生、とか中心だけ焦げて端っこは生、とか、そういうおぞましい事態が避けられなくなる。 Read more

2021/07/24

美しいパーマリンクの条件

昨今、URLの形式にこだわる必要性は徐々に失われつつある。このことは、主要ブラウザがURLの詳細を隠蔽する外観に変化してきているところからもうかがえる。もはや大抵のエンドユーザにとってURLは意識外の存在であり、若干のリテラシーを持つユーザにとっても、せいぜいリンク先がSSLに対応しているか否か、あからさまにフィッシング然とした奇妙なURLでないか、などが判別できれば十分――といった程度の代物に過ぎない。 Read more

2021/07/19

三日会わざれば誰もが狂人予備軍

時勢柄も影響しているのかもしれないが、ここのところの世間の変速具合には目を見張るものがある。 もし世間が円運動を行っているとしたら、その速度変化にうまく追従できなくなった者から順に振り落とされ、だんだんと壁の隅あたりに溜まっていくことになる。やがてそれらが層をなして縦に横に体積を増していけば、いずれ世間と衝突する。衝突した時、運の悪い構成要素がばらばらの肉塊となって一帯は鮮血で染め上げられる。円運動は止まらない。 Read more

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