2023/06/04

脳裏に美少女が居座っている

数ある「ざまあ」系の中でも、ツンデレヒロインに対する「ざまあ」を見た際には相当な激情を覚えた。要するに、物語上でしばしば主要な立場を占める横暴な彼女らに冷や水を浴びせてやろうという趣向だ。率直に言って、なんてひどいことをするんだと思った。 この手の話では優しく健気な女神のごとき真ヒロインがツンデレヒロインに取って代わる。そうして主人公は彼女らに三行半を突きつけ、さしものツンデレキャラも過去の行いを反省するがもう遅い、といった顛末で物語は幕を閉じる。ひどい、ひどすぎる、あんまりだ。分かった、じゃあ僕がそのツンデレとよろしくやろう、などとモニター越しに絶叫してみるものの、当の彼女らが愛しているのは他ならぬ主人公なのだった。 Read more

2023/05/28

擬制としての個人主義

先日、立てこもり殺人事件が発生した。4名の死者のうち2名は猟銃で射殺されている。めったにない凶悪犯罪だが、猟銃を所持している点から世捨て人の犯行とは考えにくい。安定した社会的身分でなければ所有の許可が下りないからだ。事実、蓋を開けてみると犯人は市議会議長の息子だという。 さて、市議会議員は国政と比べるといささか印象の薄さは否めないとはいえれっきとした政治家である。政治家の息子が巻き起こすスキャンダルには大小あれど、今回の件はこれ以上ない大事件と言える。大方の予想通り、市議会議長は議員辞職を余儀なくされることとなった。はて、おかしい話だ。我々は個人主義の発達した先進社会に生きているのではなかったか? 件の犯人は30代の成熟した大人だ。子供でもなければ成年被後見人(旧禁治産者)でもない。したがって、個人主義的な見地では市議会議長とその息子はそれぞれ独立した人間と見なされなければならない。この二者は互いに責任を負わなくていいはずだ。あるとすれば民法上の扶養義務ぐらいだ。 Read more

2023/05/20

球になりたい

もし身体性から解き放たれた電脳世界に行けるのなら、僕は球になりたい。 女の子でも動物でも怪獣でもなく球になりたい。色は任意のツートーンカラーで、目も耳鼻も口も手足も備えず、地面から2フィートほど浮いて漂っていたい。各々の計算資源によって毎分毎秒維持され続ける美少女の群れの中で僕はただ一個、意味もなくミニマルを気取っている。 環境光さえ計算に入れていないものだから、どこから観察しても僕を彩るツートーンカラーは変色しない。ピンクとオレンジの日に僕と出会った人は、どの角度で対面しても#F8ABA6か#FFA500しか見えない。薄暗いムーディーな空間に移動しても、僕のモデルは決して暗がりに溶け込まず逆に浮き出て映る。普通に雰囲気がぶち壊しになるのでブロックされやすい。 Read more

2023/05/14

論評「NOPE」:空飛ぶ円盤に今時マジになる

数ある都市伝説やSFの類型でも「空飛ぶ円盤」ほど古典的なものはそうない。いわゆるUFOってやつだ。歴史を遡れば世界大戦にすら登場しているぐらいだから、きっと古事記にも載っているのだろう。ところで僕はUFOと聞くと、なぜかいつもアメリカの田舎の牧場が思い浮かぶ。夜中になるとUFOがふわふわとやってきて、牧場の牛を吸い上げてしまうんだ。おそらくはこれも人生のどこかで挿入されたステレオタイプに違いない。 当然、映画史においてもUFOは長らく主力の題材であり続けた。SFはもちろん、ホラーにしてもよし、ファンタジーにしてもまあよし、なんならどのジャンルだって構わない。初っ端から派手に地球を爆撃してもいいし、思わせぶりに出たり隠れたりしてもいい。こんな好都合なものがアルファベット3文字で表せて、世界中のどの老若男女にもおおむね同一のイメージを想起させるなんて滅多になさそうな話だ。 Read more

2023/05/05

メールサーバ再考

以前にこういう話があった。かいつまむとVPSの運用を放棄したために他のメールサーバを探さなければいけなくなったのだ。僕はすでに独自ドメインのメールアドレスを12年以上運用しており、今さらGmailなどのフリーメールに鞍替えする余地は残されていない。そこで、前回の時点で最終的に選んだホスティングサービスがmailbox.orgというところだった。 このサービスの嬉しさは価格が圧倒的に安いことだ。わずか月額1ユーロでIMAP/POPアクセス可能、かつSPF/DKIM/DMARC対応。要するにSparkやThunderbirdといったメールクライアントから利用できて、重要なセキュリティ関連の認証にも対応している。とりわけ後者は必要不可欠だ。グレーの公衆電話でインターネットをしていた時代ならいざ知らず、今時これらに未対応のメールは即刻迷惑メールボックス送りにされても文句は言えない。 Read more

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